第19話 一年後

「一次選考を突破しました」


 “憑依”するゴーストの力を手に入れた灰色は、電撃文庫の新人賞に一次選考を通過した。輝かしい成績だ。


 一年経って、小説家にはなれなかった。けれども、この一年は充実した日々を送った。


 Vログを撮影したり、Amazonの電子書籍で自費出版したり、した。


 灰色は立派なアマチュアの小説家だ。


 狙うはラノベ王の冠。まだまだ葉隠入間の借金一億円は返済できないけれども彼女と、金閣寺雪と一緒ならば、いずれラノベ王になることができると考えている。


 二人は高校三年生になった。モブ子は文学部を退部し、SNSインフルエンサーとして一本で食っていく道を見つけた。たまに三人で会っては食事して昔のことを振り返る。


「おめでとう。灰色ちゃん。電撃の一次に通ったんだって?」


「ありがとうございます。それにしても、まさかモブ子さんが高校をやめるとは思えませんでした」


「あははは。何て言うの? 勢い? 若さって勢いが大事なんだ」


 モブ子は希望高校をやめて通信制の高校に行き、高卒の資格を取って将来は本格的に文学系YouTuberとして活躍すると腹に決めた。


 入間も負けていられない。早く灰色を一人前のラノベ作家にして、その編集をやるのだ。


 灰色をプロデュース。この一年で、彼女は髪が伸び、さらに可愛くなった。


「まあ、あれだな。モブ子、灰色」


「「何ですか? ラノベ維新?」」


「俺たちの戦いはこれからだ!」


 エンド。


 天才は作れる。ポジションを取り、ルーティーンによる複利効果で、天才はなる。

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ラノベ王の冠 ハカドルサボル @naranen

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