緒高さんのスコップ

氏神天琉

第1話 校内一不人気な委員会

美化委員会。それはどの高校でも平等に嫌われる委員会だ。

校門前の掃除に、花壇のお世話。ゴミ箱の回収はもちろん、学校中を回って用具点検もしなければならない。どの活動もパッとしないし、面倒くさい。それが校内一不人気な委員会「美化委員会」だ。


・・・


「では今から黒板に色ごとの委員会を書いていく。それぞれ委員会名の下にネームプレートを貼るように。」

 4月中旬。この高校にも大分なれてきて、委員会に所属する時期になった。前期間の委員会はこのくじで決まる。箱から一枚札を引いて中の色を見る。そして全員が引き終わったら先生が黒板にそれぞれの色とそれに繋ぎ合わされた委員会を発表する。正直言って札に委員会を書いてくれればそれでいいと思うが、人数調整の問題からこっちのほうが都合がいいらしい。

 先生がカツカツと黒板に色と委員会名を書いていく。白、所属なし。赤、図書委員会。黄、放送委員会。青、保健委員会。緑、広報委員会。自分の持っているの札はまだ書かれていない。最後の委員会。先生は少しスペースを調整しながら最後の1つを書く。自分にはその委員会がなんであるかもう察しが付いていた。


紫 … 美化委員会


校内一不人気な委員会に所属することが決まった瞬間だった。


・・・


「なぁ、どの委員会になった? 俺なんか美化委員やぞ。絶対めんどいって…」

委員会決めの時間が終わってその10分休憩時間、前の中学で一緒だった谷口が話しかけてきた。

「自分もだよ。まったく運がないよ。」

確かに美化なのは運がないが、谷口と一緒なら何とかなるかもしれない。

「今日の放課後に会合だろ?先輩にかわいい子いるかな?」

「やめとけって。入って早々そんな目で女子の先輩見たら引かれるだろ…」

谷口はこんな話題にすぐ切り替える。

「それに、女子の先輩がいるのかどうかだってまだわかんないんだ。変な希望もってあとで打ち砕かれてもしらないぞ?」

「大丈夫だって。俺のセンサーが可愛い先輩がいるってもう察知してるから!」

「可愛い先輩がもしいたとしてもセクハラはすんなよ?高校入学して早々友人が捕まったとか笑い話にもならないからな…」

「わかってるって」

本当に可愛い先輩がいるのかどうかまだわからないのにここまでウキウキできるのも才能なのかも。


・・・


 授業が全て終わって放課後。自分達美化委員組は担当の先生が指示した場所に向かっていた。

「自分達の教室から階段を上って、下りて、上って、下りて。どんだけ複雑なんだよこの校舎。」

「古い校舎なんだからしゃーないだろ。まだこの辺に足を踏み入れたことないからな。死体とかあるかもしれないぞ?」

「そんなわけないだろ…」

どんなに古めかしい校舎だとしてここは学校だ。死体なんて転がっているはずがない。ホラーゲームじゃないんだから。

「お、おい。なんだよ。」

谷口が指をさした方向に何か人型の物体が転がっていた。

死体?そんなわけがない。だってここは学校だ。廃墟じゃない。それに死体なんかがあったら警備員やなんちゃらが見つけるはず。あれは死体じゃない。あれは死体じゃない。と念じながら少しずつ近づいてみる。

「これ本当に死体じゃないよな。」

 近づくにつれてが何なのか鮮明に見えてくる。は制服を着ている。

「あれ制服着てね?」

谷口はその人型の物体に思いっきり近づいてみる。自分もそれに連れて。

「あ、これ寝てる?」

その人型の物体は死体じゃない。普通の人間だ。それに女子生徒だ。

「う、うわぁ!」

その女子生徒が突然起きた。谷口と自分は突然のことに驚いて後ずさりした。なんでこんな所で寝ているんだよ。

「あ、ごめんなさい! 急に驚かしてしまって。 もしかして新しく美化委員になった人?」

「はい。 先生からこの向こうの教室に行くよう言われました。」

とりあえず冷静に返す。

「あ、そうなの! よろしくね! 私も美化委員だから。 教室まで案内しようか?」

「お願いします。 この辺来るの初めてなんで。」

この人が僕たちの先輩か…半年間上手くいけるかどうかもう心配になってきた。

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