第8話【終わり】

【最終決戦】

 俺たちは海の魔王を倒すために、船に乗ったはずだった。

 俺たちの乗っていた船は転覆し、そのまま飲み込まれたが、これも海の魔王の仕業なのか水中で息ができる。

 俺たちは、不思議な形をした建物が並ぶ海底遺跡を歩いた。

 朽ちた教会、一際高い場所にあるそれは神秘的な雰囲気を醸し出していた。

 階段を昇り、俺たちは教会の腐りきった木の扉をくぐる。

 男が立っている。

 青白い肌をしてタコのような瞳を持ち静脈血のような色をした髪の男が、俺たちを見てニヤリと笑んだ。

「待っていたよ、ギルドの皆さん。」

「さあ、楽しいパーティーの時間だ!」

 彼はそう言うと、一気に距離を詰めてきた。




 冗長なプロットに飽きてきてはいないか?

違う!これは俺の意思で始めた物語だ!

 お前の意思では、この物語は終わらない。

ならば、自分の手で終わらせるだけだ。



 自問自答を繰り返しながらの最終決戦は、楽なものではなかった。

 仲間が死んでいくのを見て過呼吸になりかけながら、俺は戦い続けた。


 海の魔王が手負いになった時、生き残ったのは俺一人、どうしようも無い。

「……なにか3つだけ願いを叶えてやる。」

「命乞いか。」

「違う……お前は時空を超える必要がある願いを持っているだろう」


「俺は……」

 俺は信用してもいいと思った。


「異世界が干渉しなくて大地震が起きず、"神産み"が起きなかったことにしてほしい。」

 海の魔王は俺の言葉に、大きな声を上げて笑う。

「はははっ!その願い、聞き届けた!」

 辺りが暖かな光に包まれ始め、魔王の顔がぼやける。

「さらばだ。また会うことが無く、幸せに生きてくれ。」


【巡り巡る月と太陽】

 私の中に、どこか欠けたものがある気がする。

 それが何かはわからず、もう17年が経ってしまった。

 帰り道を夏の匂いを含んだ風に包まれながら私は歩く。

 何事もなくただ歩くのは退屈だが、それでもそこには確実な平和が遺されている。

 過去を護り、未来を作る。

これがどれだけ素晴らしいことなのだろうかと、私は思いを馳せる。

ふと、強い風が吹く。

 髪をおさえ風が止むのを待つと、急な坂の下にどこか見覚えがある、自分とは似て非なるような懐かしげな人物が立っていた。

彼は少しだけ微笑むと、風となり消えた。






―――終わり

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Earth Quake 神原 暁 @akira_kamihara

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