感想を叫ぶ場所
あかいあとり
死別ブロマンスを書いて欲しいリターンズPickUp感想(2024/6/10)
こんにちは。普段はなろう系列ムーンライトノベルズでBL作品を投稿しています、あかいあとりと申します。死別ブロマンスないしBLが大好きな者です。
今回、草森ゆき様主催の死別ブロマンスを書いて欲しいリターンズ(https://kakuyomu.jp/user_events/16818093078423711258)に参加しました。
2024年6月10日現在50作品が参加されているようです。こんなに素敵な企画があるのすごいなー!と主催者さまと作者さま方全方位に感謝しながら参加作品をほくほく拝読しています。素敵な企画&作品ありがとうございます!!
自作は「アリスの眼球(https://kakuyomu.jp/works/16818093078610141076)」です。目玉マニアの少年・蓮とアルビノの殺し屋アリスの疑似父子師弟もので書きました。お好きな方はぜひどうぞ!
さて、こちらの企画ですが、上限五千字とは思えない密な関係性やキャラ立ちが魅力的な小説から、きれいにまとまった切ない作品、後味の悪さが後を引く素敵作品、死別なのに爽やかだったり面白かったりする個性的な作品などなど、最高の作品が見るたびに増えていてすごいです。どれも素敵で、全作レビューを書きたいくらいなのですが、それも得体の知れない不審者っぽくて怖いよな……と思い、やり場のない感想をここに書くことにしました。
前置きが長くなりまして恐縮です。
参加作品どれも個性があって素敵なのですが、その中でも特に胸に刺さった十五作品ほど、勝手に感想を叫ばせてください。なお、ネタバレには配慮していませんのでご容赦ください。
■逃避行未満(https://kakuyomu.jp/works/16818093078444109930)
根性焼きと一回きりのキスが印象的な物語。「お前さ、一度でも俺の気持ち確認してくれたことあったか」でひたすら頷くばかりでした。残される側に心身ともに傷を残す疾風の身勝手さと、あと一歩踏み出せなかった賢人の臆病さが嚙み合ってしまうのが悲しいです。取り返しのつかない両片思いのほろ苦さがたまりません。
■改変(https://kakuyomu.jp/works/16818093078447749517)
オリジナリティはあれど文体に難があった小説家透吾と、彼の死後、文体を改変することで『光森透吾』の名を世に知らしめた友人の物語。カフカとブロートの関係になぞらえるように作品を託されるけれど、透吾がこだわった文体を殺してでも小説を生き返らせていく主人公の思いが好きです。愛とは必ずしも全肯定することではないし、透吾の才能を誰より信じていたのも主人公だけれど、彼のしたことを透吾がどう思うかは決して確かめられないというのが切なくてとても良かったです。
■また死んだら会おう!(https://kakuyomu.jp/works/16818093078451315148)
三途の川で邂逅する友人たちの物語。いつか来る別れが怖くて自分から離れることにしたという語りや、同じタイミングで死ねるなら悪くないという思いが重くて好きです。一度は死に戻れても、二度目は帰ってこられなかった友人を、主人公は追いかけようとしたんでしょうか。そんな形では死ぬなという友人からの叱咤が、厳しいながらも爽やかでじんと来ました。死別なのに爽やかで、光が残るような余韻が好きです。
■十年一昔(https://kakuyomu.jp/works/16818093078494251386)
事故で両親を殺めてしまった高畑と、霊能力者の宮下が、十年ぶりに会話をする物語。今にも死ぬという緊迫した場面のはずなのに、久しぶりの友人どうしの軽い会話にいまいち緊張感がないのがシュールで面白かったです。「息子さんの方だよ!」の勢いで、高畑の状況を思えば笑っている場合ではないのについつい笑ってしまいました。ぽんぽん進むふたりの会話劇が面白くて、印象に残っています。
■薄膜(https://kakuyomu.jp/works/16818093078424050365)
おしゃべりで嘘つきな男ゴンと、自分のことを話すのが苦手な男の死に際の物語。同じ嘘を二度つかない、というフレーズが印象的で、物悲しい余韻が最高でした。作り話をする癖のあるゴンは、主人公から見れば何でも面白おかしく語ることができる憧れを向ける相手で、自分の薄膜を守ることばかりに重きを置く主人公は、ゴンから見れば彼の話を最後まで聞いてくれる唯一の相手です。かちりと噛み合う関係性もさることながら、本当の自分を知る人に発見者になってほしいというゴンの願いがなんともいじらしく感じられて好きでした。
■リンボの涯(https://kakuyomu.jp/works/16818093077548470398)
名家の一人息子・若汐が、素行の悪い男・語桐の死体を背負って海に行くお話。若汐は語桐のことを一貫して友と呼びますが、一方で唯一の友人、唯一肉体関係を持った他人、自分にすべてを教えた男と、かなり重い関係であったことが伺えます。語桐の方も若汐の女を寝取り、憎まれようとしたり、死後のことを頼める相手は若汐しかいないと語ったり、ふたりの間にある巨大感情が刺さりました。ふたりで海を見に行く、からの地獄へ行こう、はもうこれ以上ない愛のように思えてなりません。最高の関係性、最高の後追い心中でした。
■死ニモノ見世物親子モノ(https://kakuyomu.jp/works/16818093078562998368)
見世物小屋の用心棒カワズミが、親友の幽霊セキの息子であり自分の息子でもあるホマレに向けて書く、愛情たっぷりのお手紙。憎みながらも逃げろと咄嗟に言ってしまうセキとカワズミの友情、幽霊の父と自称クズの父の愛を受けるホマレ、いいところに来てくれるパワフルさんと、とにかくキャラクターたちと父子・親友間の関係性が最高で、もっとこの人たちを見ていたい、ぜひぜひ長編で見たい!!と思う魅力的なお話でした。
■なんてひどい、人だろうか(https://kakuyomu.jp/works/16818093078558842001)
真面目でお堅い主人公と、似た者どうしに思えた「彼」との物語。大学構内で酒と煙草を嗜む彼を見かけた主人公は、彼に裏切られたとショックを受けます。病気で死ぬ寸前だということを明かさないまま「君で良かった」と言い残していく彼は、まさにタイトルどおりのひどい人だなあと思わずにいられません。残されていく側にさりげなく、しかし深々と傷を刻み込んでいくこういう関係性、大好きです。淡々とした語り口もお話に合っていて好きでした。
■さいしょからグー(https://kakuyomu.jp/works/16818093078506286199)
地方の農村で生まれ育った最強の矛シモスと最強の盾アスピダの最後の瞬間の物語。髪を伸ばしているのは余裕の証というところになるほど!となり、自分で空けた腹の穴を撫でる描写に言いようのない色っぽさを感じました。矛と盾の並び立つ関係はもちろん、やむを得ない経緯でお互いの親を手にかけているという唯一無二の関係性が刺さります。どうしようもない状況で、それでも頭を潰すことはできないシモスの心情が切なくて素敵なお話でした。
■薬食い(https://kakuyomu.jp/works/16818093078596987729)
何でも治せる医者ロクウリと、そんな彼を治すヤブ医者の物語。あんたには教えてやる、と主人公に心許している態度を見せつつも、終始ミステリアスなロクウリが魅力的です。帳簿に付けていると言いながらもロクウリを治し続けて世話を焼く、主人公のぶっきらぼうな優しさが大好きです。ロクウリがいなくなっても彼の髪を持ち続け、ヤクザからの金を突っぱねながらも請求書を捨てられない心情を思うと切なくなります。主役ふたりが魅力的な、独特の雰囲気のある短編でした。
■不死身が死んだ日(https://kakuyomu.jp/works/16818093078687038703)
何度心中しても生還する不死身のような男と、彼にだけ小説を見せていた男の死別ブロマンス。不死身に思えても不死身ではなかった人を喪った寂しさから、主人公は執筆を続け、小説の中で彼を永遠の人にします。「一緒に死んでくれ」と彼に懇願される人たちに対して、主人公の中には嫉妬する気持ちがあったのかもしれないし、心のどこかで自分にこそそう言って欲しいと思っていたのだろうか、などと想像するとたまらない気持ちになります。ほろ苦い後味に胸を打ち抜かれました。
■くちなわなしと、よろこびの肉(https://kakuyomu.jp/works/16818093078654894264)
ヤクザの守下茂と、人を食べる人外の生き物クチナシの、食肉で始まり食肉で完成する絆の物語。風俗にクチナシを連れて行ってみたり、いつも服を選んであげたり、果ては結婚したのに離れられずに妻に別居されるレベルで一緒にいたりと、節々にまで伺える人間と人外のどこか無垢で純粋な絆が刺さりました。なんといってもラスト(序盤)の色気溢れる食肉シーンがたまりません。おいしい食事をあげられなかったことが心残りで、最後に喜んで自分を捧げるだなんて、最高の愛ではないでしょうか。大好きです。
■セックスしようぜ!(https://kakuyomu.jp/works/16818093078728669544)
末期癌で死の淵にいるヒロと、そのパートナーである拓也の看取りの物語。読む前は軽い調子の誘い文句にしか見えなかったタイトルを裏切るような、優しく慈しみに溢れたお話でした。「大事な仕事ですよ、あなたにしかできません」という医師の言葉が印象的で、その後に笑顔でふたりだけのセックスを持ちかけるところは涙腺に直撃します。寂しくて切ない、愛を強く感じる短編でした。
■双曲線(https://kakuyomu.jp/works/16818093078626364846)
同じ理由で同じ瞬間に死んだ男ふたりが、死出の旅路でほんの一瞬交わる瞬間を描いた物語。静謐で透明感溢れる文体が心地よく、読み終わった後にタイトルを見るとすとんと胸に落ちてくるものがあって、印象にとても残りました。会ったこともなく、名前すら知らないふたりがぽんぽんと交わす会話や、だんだんと打ち解けていく様子が微笑ましいです。もしも来世があったら、からの流れは涙腺を直撃します。来世できっとまたこのふたりが出会えますようにと願わずにはいられません。純粋で光に溢れた、爽やかな短編でした。
■君の死体が消える前に(https://kakuyomu.jp/works/16818093078912777642)
殺し屋タクショウが、双子の片割れイチレンの死体処理に立ち会う物語。重い過去を持つイチレンとタクショウとは対比的に、人間味に欠ける葬儀屋が個性的で好きです。最初から片割れが死んでいるのでなるほど葬儀を見守る死別ブロマンスなのかと油断していたら、最後の展開にびっくりしました。ぼ、が頭に焼き付いて離れません。読み終わった後に呆然とする短編で、強く印象に残りました。
■面霊気(https://kakuyomu.jp/works/16818093078927552491)
大学の同級生かつカレー中華仲間の鈴之助と疋田の、ホラーみが強いのにほっこりで終わる物語。見えない疋田の霊に憑りつかれ、似ても似つかない疋田と間違われるようになった鈴之助が、彼の無念を晴らしてあげる展開がきれいで好きでした。めでたしめでたしで爽やかに終わると思いきや、ますます懐くなアホ、で終わる流れに笑いました。
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以上です。ここで感想を書かせていただいた作品以外も本当に良作揃いで、こんなに死別ブロマンスが読める機会はそうそうないのではないかと感動しっぱなしです。最大五千字と非常に読みやすい文字数の作品群ですので、まだ読んでいない方がいましたら、皆様ぜひぜひ覗きに行くことをおすすめします。
見るたびに参加作品が増えていくので、これから先もきっともりもり素敵な作品が投稿されるのだろうなあと思うと一読者として楽しみです!! 繰り返しになりますが、素敵な企画&作品ありがとうございます。恩恵にばりばり預かっております。
それでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。
感想を叫ぶ場所 あかいあとり @atori_akai
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