目玉という物体の持つ美しさに惹かれる少年の内面を描く冒頭部に、まずぐっと引き付けられました。耽美性を帯びていながら論理的、淡々としているようで熱意を感じさせる、まさしく狂気的な語り口です。この調子で物語が結末を迎えたとしても、僕は満足して読み終えられたことと思います。
しかし実際のところ、それはあくまで導入に過ぎません。「死別ブロマンス」と銘打たれている通り、少年は不思議な殺し屋と出会い、そして別れを迎えます。
一般的に殺し屋というのは資格ではなく、殺しによって対価を受け取って生活している者に与えられる呼び方でしかありません。殺し屋になりたければ、「自らの意思で犯罪者となる」ほかないわけです。
そうであるからこそ、殺し屋たちのあいだには奇妙な絆が生まれます。光の当たる世界には決して許されない欲望。どこまでも異端者であり続ける疎外感。常に死と隣り合わせでいる生き方を、自ら引き受けた者のみが纏う哀しみ。「いつ死んでも自業自得」だからこそ、彼らは傍にいる存在を特別視してしまうのだと思います。
ふたりの殺し屋が取り結ぶ関係と、その美しくも悲しい結末。堪能致しました。