闇の皇女と復讐の旅

星華

1.闇の姫、カグヤ

夜の帳が妖怪の国を包み込み、月光が薄暗い宮殿の庭を青白く照らしている。冷たい風が吹き抜け、庭に植えられた古木がざわめく音が響く。重厚な扉がきしむ音と共に開かれ、ひとりの少女が冷ややかな表情を浮かべて歩み出てきた。



彼女の名前は神夜カグヤ。闇の力を持つと恐れられ、母である蘭陵らんりょう王に虐げられていた。王ほ長く艶やかな黒髪が風に舞い、青色の瞳が月光を受けて不気味に輝く。


「母上、お呼びですか?」カグヤは薄暗い大広間の奥に座るオロチ王に向かって一歩前に出る。


「神夜、お前はわが一族の恥だ。お前の存在がこの国に不吉をもたらす。」王は冷酷な声で告げる。彼女の瞳には一切の慈悲も母性愛も感じられない。神夜はその冷たい眼差しに耐えながら、静かに答える。


「私は母上の言いつけに従っております。どうかお許しを。」


しかし蘭陵王の表情は変わらない。彼女は立ち上がり、手に持った鞭を振りかざす。

「言い訳は無用だ!」


鞭が空を切り、神夜の背中に激しく叩きつけられる。鋭い痛みが彼女の全身を貫くが、神夜は一言も悲鳴を上げない。打たれるたびに心の中の闇が深まるような気がした。


「お前の力を封じることができなければ、国が滅びる。分かっているのか?」蘭陵王の声は冷酷で、鞭の音が再び響く。


「はい、母上…」神夜は必死に痛みをこらえながら答える。心の中では、母への憎しみと恐怖が渦巻いていた。


その夜、神夜は不潔な宮殿の一室で孤独に過ごし、心の中で何度も問いかけた。なぜ自分はこんなにも冷酷に扱われるのか。なぜ母上は自分を愛してくれないのか。


「少しでいいから、愛されたいな…」そう呟いた月明かりの下、神夜は窓の外を見つめながら、胸の中に秘めた決意を固める。自分の力を恐れ、抑圧しようとする母上に対して、いつか必ず復讐を果たす。その時まで、神夜は耐え続けることを決意した。


こうして、神夜の長い旅の第一歩が静かに始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

闇の皇女と復讐の旅 星華 @sellromi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ