第4話・図書館談話。

 月曜日の昼下がり。昼休みの時間、俺は図書館で、AIの本を読んでいた。


 ふと前の机を見ると、なんと、後ろ姿で気づかなかったのだが、大江美琴嬢が何やら黙々と本を読んでいた。

 俺が顔を上げたら、ちょうど横を向いて何かを考えているような顔をしていたので、前の席の女子が大江美琴であることに気が付いたのだ。

 俺は焦って、美琴嬢の横顔から目線を外し、AIの本に目線を移した。

 どうしよう、緊張して本の内容など全然頭に入ってこない。


 美琴嬢はこちらの緊張の気配でも察したのだろうか、軽く後ろを向き、俺の読んでいる本が目に入ったのだろう


「君もAIに関心があるのか?」


 と奇跡的なことに、俺に声をかけてきた。


 俺は慌てて前を見て目に入ったのだが、美琴嬢は『ディープラーニングの理論と~~~~』などと言う、難しそうな本を読んでいた。


「なぁ、君。あぁ~。たしか隣のクラスの……」


「椎野です!」


「椎野?」


「椎野アズマです!」


「じゃあ。アズマくん。端的に聞くが、君はドラヤキモンや鉄腕アトミックのようなロボットは実現可能と思うかね?」


 なんと、美琴嬢がしてきた質問は、俺が長年夢見てきたジャンルである。


「ぼ、僕は。。。ロボットに生物のように空腹や痛みなどを覚えさせ、疑似生命体として、三半規管のような機関を作り、上下左右や、痛み、空腹などの概念を作っていけば、その延長上に、彼らのような知的ロボットも不可能ではないと思っています」


 緊張のあまり、俺は声も上ずっていただろうが、内容も上ずった意味不明な夢を語ってしまった。


「なかなかユニークな考えだね」


「いえ。自分が作ろうとしてるのは、ヒヨコッチやペット系ロボットのようなものであり、その先に知的無機生命体のようなものがひょっとしたら作れるのではないかと、、、愚考しています」


 声は上ずり、口はしどろもどろ。やめたげて~、彼のライフはもうゼロよ~~~!


「実に興味深いね。君は何か作っているのかね?」


「ヒヨコッチのようなペット系ゲームを少々!」


”リーンゴーンガーンゴーン”


 美琴嬢は読んでいた本をとじると席を立ち


「完成した暁には是非見せてほしいものだね。楽しかった。またどこかで会ったら意見交換でもしてほしい」


 そう言って、本を本棚にしまい、図書館を出て行った。


 俺は、疲れがズンと押し寄せ、しばらく図書館の椅子にしなだれてしまった。


 我ながら何を口走っているのか。恥ずかしい。

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AIに見る夢。 はお @haokuro

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