第3話・ジュン。

 6月15日、土曜日、11時15分前後。梅川駅前。


 俺がジュンと待ち合わせの約束の場所、タカハシカメラの出入り口付近に行くと、ジュンはガードレールに寄りかかりぼーっとタカハシカメラ前の通りを眺めて待っていた。


「ジュン。お待たせ」

「おぅ」


 ジュンはそのまま、俺の顔も見ず、少しまぶしそうな顔というか、顔をしかめておかしな表情をし、そのまま、タカハシカメラを見た。


「行くか」

「うん」


 ジュンはベージュのチノパンに黄色系のTシャツ、半そでの濃いグレーに見える黒地に白い模様が印刷されているシャツを着ている。

 髪の毛はやや長めのショートヘアを五部に別け、頭頂の髪が通りのやや暖かい風に吹かれてなびいていた。

 スポーツで筋肉は締まっているが細身の体で、軽い足取りでタカハシカメラの自動ドアに向けて歩いていく。


 俺もそれに続いて自動ドアをくぐった。


「どこ行く?」

「とりあえず、ブリッジレコードかな」

「CD買うの?ネットで拾って来ればいいじゃん」

「お布施ってやつ。推しの歌手のCDは持っておきたいんだよね」

「ふーん。わかんね」


「お、この歌手しってる。崎本晴美。おふくろが歌ってた」

「演歌かよ」


 ジュンと会話しながら、自分はdarekoの新作CDを探す。


(d...d...d...daigorou......i...j...k......r...あったあった)


「お。なつかしー、dareko!新曲出してるの?」

「うん。まぁ」

「今度聞かせろよ」

「いいよ」


 俺はdarekoの新作CDを手に取って、ジュンとCD屋の陳列された商品を眺めて楽しんだ。

 知ってる歌手、知らない歌手、新しい歌手、古い歌手、なかには知らないジャンルなんかもある。

 ジュンと、ああだこうだいいながら、しばらく眺めていて


「出るか」


 とジュンが言ったので、レジにCDを持っていってお会計を済ます。


「ブリレコはこれだけ?」

「これだけ」

「じゃあ次は、DEOか?」

「かな?悪いな。俺の趣味につき合わせちゃって」

「ノープロ。ノープロブレムよ。アズマくん」


 俺はオタク趣味で、ゲームやアニメが好きだが、ジュンはどちらかというとスポーツマン。ゲームやアニメも付き合ってくれるが、ジュンの遊びに付き合うと、自転車でそこらじゅうを走り回ることになる。



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