第2回短歌・俳句コンテスト【短歌】二十首連作部門『感傷町三丁目』

屑木 夢平

短歌二十首『感傷町三丁目』



ひび割れた鏡に映る疲れ顔死んでないけど生きてないやつ


明日なるはずの私を手にかけて昨日のままの私を生きる


久方の雨にこの身を差し出せど洗い落とせぬ自殺願望


四畳半梅雨に生まれた火蜥蜴は海底の夢を独り見るなり


懐に忍ばす抒情原色のネオンにひらめき雨雲を裂く


桟橋を照らす街灯落ちる影行きは二つで帰りは一つ


団地裏潰れた駄菓子屋の前で愛されたいと泣く子らの声


わがままは言いませんただ欲しいだけ夢と希望とお金と愛と


午前二時伊勢湾岸道下り線加速していく消えたい心


逃げ込んだインター沿いのラブホテル排水口に捨て行く未来


夢ふふむなれど開かぬ何度目の春を迎えん栄の桜


夏銀河寝物語を聞きたまえ永遠に見果てぬ僕らの夢を


夢ばかり追いやがってとあの頃の僕が怒鳴っている二十五時


死んでやるもう死んでやる今すぐに明日かあさって明明後日かに


これまでと嘆く背中を押す風は故郷の母の呼び声に似て


後悔を吐き出すための溜め息は風の最小単位とならん


少年が上ばかり見て歩くのは空が溜め息の墓場だからか


夕焼けに溶いた怒りは翌朝の東の空にまだ残ってる


感傷が夜行性ゆえ僕たちは深夜のラジオしか聞こえない


後悔と挫折の踏切り超えたらばここは感傷町三丁目

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第2回短歌・俳句コンテスト【短歌】二十首連作部門『感傷町三丁目』 屑木 夢平 @m_quzuki

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