4日目 バイク日和

さて、死んだように寝て、その快適な眠りを終えて起きると、今日は快晴だった。今度こそ雲がない!!

…と思ったが、ああ〜なんかあそこに小さな巻雲が巻いてる。さて、眠い目をこすりながらまた制服に着替えて今日の予定を確認

…ん?今日ってまさか?

“第三ブロックファイター定休日“

「よっしゃあァァァァァァァァァァァァ!!!!!!休みじゃあァァァァァ!!!!!!」

さて何しようか?三ヶ月で今日と明日だけだ。よぉし。今日は久しぶりバイクカチ回しますか。

もともと使ってないけど親父が持っていて、うちにあったバイクを私がもらってレストアした旧式のバイクがある。

スーパースポーツでめちゃくちゃよく走る。白いメインカラーに特徴的なカウルと赤いライン。

うん、かっこいい。久しぶりに走ろうじゃないか。

うちの敷地内には練習用とは言えどもあまり使っていない滑走路とその奥には山道がある。最っ高だね。

時速三百キロの世界と一万回転の世界はすごいぞ?視界が一つになる。早速動いてもらおう。

バイクのはアルフォンス・ペガサス950だ。ツーストローク四気筒のバイクだ。最後時速三百二十キロ、時速百キロまでたったの二秒代前半。

恐ろしいモンスターパワーのスーパースポーツのバイクだ。重量もめちゃくちゃ軽い。

具体的にいうと190キロのボディーだ。それに270馬力のV形四気筒エンジンを積んだ化物だ。

コーナーも鋭いすごいバイクさ。値段は忘れたが、財布の中身が全員騒動らしいからな。

さて、こいつに乗って今日は遊ぶか。一応制服にはプロテクターが内蔵されてるから少なくとも骨は折れない。

しかも構内だからヘルメット無しでもいいが、レッドゾーンまで回すから今回はいるな。

さてと、久しぶりに回してやろうじゃないか。ペガサス。大きいラジエーターもしっかりと収まっている。

さてエンジンをかけると美しく甲高いツーストローク四気筒エンジンの響きが鳴り響く。まるで生きてるようだ。

ニュートラルで吹かせばもうそれは楽器だ。音色を奏でている。かっこいい。さて、一速に入れるぞ。

そしてスロットルを開ける。すると開けたと同時にエンジンは唸り、そのままスロットルに従って走ってくれる。

さて、このまま少し走って滑走路に向かおう。そして力強いエンジンと共に走り、例の滑走路についた。

よし、回すぞ。練習路だ。おおよそ十キロはある。こんだけあれば十分だろう。

ん、待てよ、なんだあの車…あれはサンダース隊長のカスタム車じゃないか。エンゲージか。

クラシカルな見た目と反対に凄まじい出力を誇る。特にサンダース隊長のはすごいカスタムしてるようだな。

噂には昨日聞いたが、思ったよりもすごいカスタムだった。

外面からは分かりづらいが、音からして相当なチューンをしている。

「君も回しに来たのか。にしてもいいバイク乗ってんな。羨ましいよ。」

「いやそっちもすごいカスタムしてますね。」

「よくわかるな。まあいい。競争でもするか。」

「いいっすよ。」

せっかくの休みだ。こんなことしてもいいだろう。上層部も納得するだろう…あれ、なんか奥にもう3台くらい来てるな。

あれはスピアーノが乗ってるな。そしてその奥からはアレクサンダー教官…メンツが濃いな。しかも全員車かよ。

私だけがバイクか…。それも旧式の?まあいい、性能と腕前なら誰にも負けない。

こう見えても大学の頃に一回こいつでリトルグランプリ優勝してるからな。私のズッ友さ。

そしてその奥からは…待てよ、あれ隣の部隊の隊長のようだ。

「エース、お前も回しに来たのか?」

「もちろんだスピアーノ。それに教官たちまで揃ってすごいな。」

「休日の楽しみだよ。これが。」

「俺ら教官も今日が三ヶ月に一度の休みだ。やるしかないだろ。」

「そうなったらやるか。」

「競争でいいか?」

「もちろんだ。」

全員で競争することになった。合図は私が行う。何せ1番身が出てるからな。というかなんだよ。

私以外全員金持ちだな。サンダース隊長はクラシカルな見た目のエンゲージ、

教官は滑らかな見た目のスーパーカーであるアレス、

スピアーノはこの中で1番高級なハイペリオン、

隣の部隊の隊長は赤色のボディーが特徴の1人乗りのガチのレースカーのファイアーバード、

加速は私がもちろん1番だ。馬力はサンダース隊長、安定性は教官、合計スペックで言うならスピアーノ。

バランスが取れてるのは隣の部隊の隊長のものだろう。

さあ誰が勝つのだろうか。私は左手を上げた。これを下げた瞬間、スタートだ。

三…二…一…

バサッ!!

一気に左手を下ろした瞬間、一斉にかっこいい音や、美しい音、甲高い音が響いた。

行け!!私のペガサス!!

そのままフルスロットルだ。ちょっとグリップが甘いか?でも巻き返せる!!

加速で抜いていく!!

時速120、140、170!!全然まだまだ伸びるぞ!!

車たちを置いていくが、後からスピアーノが追いついてくる。

行けっ!!そのまま伸びろ!!もう七速だ!!今は七千回転!!時速三百キロ!!

オラァァァァァ!!

八千回転!!

九千回転!!

一万回転!!

そして一万二千回転!!!!

最高時速だ!!

全てが一つにまとまる。

後数秒耐えろ!!

後ろからサンダース隊長とスピアーノ、教官、隣の部隊の隊長が迫る。

うおぉぉぉ!!

ギリギリの接戦だ。後少し!!

後少しだ!!!!

ヒューン!!

そのままギリギリのゴールイン。どうだ?勝ったか?減速して後ろに回る。甲高い音を後ろから出しながら。

「どうだった?」

「エース、お前が1番だよ。」

よっしゃあ!!!!勝った!!

気分がいい。ただ、まあカテゴリーが違うと言うのもあるだろう。そうすると隣の隊長が寄ってきた。

「いやあ、悔しいな。まあおめでとう。さすがだよ。このあとは俺はしばらくここで遊んでるわ。

ドリフトでもしてたらいいだろうと思っている。ところでエースは?。」

「この後山に行く。まあ、軽く走って帰ってくるさ。」

「いいね!行ってこいよ。」

その後、みんなと別れ、山へと向かった。綺麗な山の谷間にある道を走る。そこに行くまでも楽しい。

誰もいない通りをかっ飛ばす。綺麗な山にこだまするエンジン音は美しいものだった。さて、ここから山だぞ。

いきなりのきついカーブに右カーブに左カーブ、そしてヘアピンカーブ。

下り坂と上り坂にあるきついコーナーはすごく楽しい。コーナを走るバイク、ペガサスにはぴったりだ。

リアブレーキの感覚がしっかりしてる。何よりもトルクが太い!!だからしっかり路面にも食いつく。

なんで楽しいんだ。さて、そうしてどんどん上がっていくと綺麗な景色と共に自分の働いている工場が見える。

しっかりと統一された工場のデザイン。ああ、なんて素晴らしいところで働いているんだ。

だが、このバイクもしっかり走る!私についてきてくれる。もう何もかもが満たされている。

青空に向かって走るドライブは最っ高だ。そして最後のカーブを曲がった!!そして減速して駐輪した。

青空の下に映える白いボディーは真珠だ。赤いラインはリボンだ。まるでプレゼントだ。最高のね。

さて、頂上に来て、しばらく景色を楽しんだ。美しい。木々は重なり合い、川は響き合い、鳥は歌い合う。

ああ、なんて美しいんだ。おっ、あそこにはドリフト大会してるみんながいるな。ヤッテンネー。ケムリアガッテンネー。

さて、近くにある自販機で軽くジュースを買って飲む。缶を開ける音さえも自然に重なる。

そして口をつけてそのまま飲んだ。体に自然の空気と共に飲み物が喉を通る。

あぁーっ。

最高だね。山の上で飲む飲み物は。

さて、一服終えたところで戻りましょうか。

ついでに途中に団子屋があったな。軽く寄っていこう。磯部焼きはあるかな?ついでにあれば緑茶ももらうか。

またバイクに跨りエンジンをつける。

ああ、美しい。バイクは美しい音が響く。そのまま山を下っていく。帰りは流れるように走る。

そしてさっきの通りの横にある通りの方へ行き、そのまま峠道を走る。またカーブを走って走る。

切り返しのターンもこのバイクならリアブレーキだけで曲がれる。とても旧車とは思えない。

私の親父が免許取ってから初めて買ったバイクだ。まあ、乗らなかったらしいから私にくれたわけだ。

そしてそれをレストアしたのだが、さすが、元々が最高にいいバイクだ。

素晴らしいよ。駆け巡る緑の中、橋を越えて、山の奥のポツンとした団子屋に到着した。貫禄のあるお爺さんが焼いていた。

「すいません、磯部を一つ。」

「あいよぉ、まいどぉ。」

そして焼いてあった団子をとってちょっと炙った海苔をすぐに巻いてくれた。

「はい、磯部一丁。」

「ありがとう。」

緑茶はないようだがいい。磯部焼きがあれば満足だ。いただきまーす。最初の一口を頬張る。

うん!香ばしい磯の香りの後に団子が合う。

外はパリッと中はもちもち。バイクでくると何故かこういうものがとても美味しく感じる。

もちろん元々美味しいが、バイクでくるとさらにもう一味美味しくなる。

「大将、美味しいっす。」

「おおそいつはよかった。最近はあんまり客が来なくてな。でもこうやって団子を焼いて早三十年だ。」

対象は過去について話してくれた。磯部焼きのおつまみだ。

「最近は戦争が酷いですからね。」

「そうだな。俺も元は君とおんなじ会社で働いていたよ。その制服と同じで炎の模様があった。まあ、赤色くらいだったがな。」

「それでも俺はいつか平和な日が来ることを祈ってたさ。それが今はこのザマだ。」

「なぜやめたんですか?」

大将は腕を組んで考えた。

「なんでだったかな?もう年だったからかな。俺にはついていけなかったよ。」

「私も新入りですけど、教官をたまたま薙ぎ倒して白い炎になったわけでまだ経験は浅いんです。」

「そうか…まあ、一つ言っておく。夢は諦めちゃいけない。最後までやり通せ。」

「そうですね。では私はもうそろそろ行きます。団子、美味しかったですよ。」

大将は細い目を丸めてにこやかに笑った。

「そいつはよかったよ。またよかったらきてくれ。」

「もちろんです!」

私はまたバイクに跨った。そしてエンジンをつけて対象に会釈した。まだ磯部の香りがかすかに残っている。

そしてまた山を下り、峠を走る。川はキラキラと輝き、宝石のようだ。バイクもご機嫌だ。それにしても今日はいい日だ。

暑くもなく寒くもない。完璧だ。甲高いエンジン音と共に走る日中は最高だ。もちろんゲームするのも楽しいさ。

でもバイクに乗るのが一番だ。ああ、あいつらは今頃何してるんだろうな。まだドリフトでもしてるのだろうか。

そう思っていると、前から見覚えのあるエンゲージとハイペリオンが現れた。どうやら夕方に峠に行くようだな。

その後ろに朝見た車が連なっていた。多分みんなでツーリングだな。いってらっしゃい。

そのまま私は山を下り、また道路を走る。今はほとんどがインディバル・パーシュート社の土地だから走り放題。

なんならドリフトターンしても警察すらいないから何も言わない。ただ、自己責任だ。

転けても知らないってことだ。緑の山を後にして今はただ走る。とても清々しい風を浴びながら白い閃光となって走る。

そうしてひたすら走っていくともうそこには工場と私のデッキがあった。

さて、燃料とオイルをぶち込んで私の寮まで走る。なぜかバイクは悲しげな声を出してる。

また今度乗ってやるからな。ちょっと待っててくれよ。寮の前に着いた。

ペガサスのエンジンを切ってそのまま寮の横にあるガレージにしまった。カバーをかければこれでオッケーだ。

まったく、楽しいやつめ。また乗りたいな。さて、もうすでに日は沈みそうだ。

私はヘルメットを片付け、そのまま内部プロテクターも外した。うん。楽しかった。

これだから休日は最高なんだな。さて家に着いたぞ?何をしようか。

あっ、そうだ。またペガサスに乗る用事ができたな。今、命張って戦ってるんならまた休日が来るかわからないわけだ。

ペガサスに乗ってナイトドライブでも楽しむか。今度はヘルメットはいい。

レッドゾーンまでは回さないし、簡単なドライブをするくらいだからな。ついでに夕食も済ませにいこうか。

またカバーを外し、ペガサスに鍵をさす。

そして鍵をイグニッションポジションにしてそのままエンジンスイッチに手をかけた。

また甲高い音が響いた。そしてエンジンを回せばもうご機嫌だった。一速に入れて走り出すと、もうあの悲しい声はなかった。

そのまま生きるバイクに乗りながらひたすらに山道を進む。涼しい風と共に去る夜は最高だ。

これだけ気持ちいい風が駆け抜ける夜はやはり最高だ。そのままひたすらに走る。

そして楽しい山道を乗せて街に出る。そこには色々な店やビルが立ち並ぶ。さすが都会だ。

このまま行きたい店に向けて走る。もう日は沈み、蛍がついた木のように綺麗にビルは照らされていた。

そしてお目当てのお店に到着した。そこで温かいコーヒーと共にご飯を食べる。最高だ。

自分の飯もうまいがこいつは何倍もうまい。さて、飯も終えたところで、帰るとしようか。

そしてまた摩天楼の中の通りを走り、山道に入る。

そしてしばらく走っていると、何かが後ろから大量に来ているようだ。

ん?待てよ、あれが俗に言う暴走族じゃないか…ちょっと逃げたほうが良さそうだ。

猛スピードでこっちに迫ってくる。あんなバイクの群れは初めてだ。

さらにどれもこれもとんでもなく残念なカスタムがされてしまっている。

そして頭領と思われる一台が私のバイクに一気に近づいてきた。

「いいバイク持ってんじゃん。」

「ああ、ありがとうございます。」

「ついでにもらうとしようか。」

「は?」

ちょっと待て、路地の横に止めさせる気だな。その隙に私をボコしてもらおうと?冗談はやめとけ殺すぞ。

「それはできないな。」

「まあいいから横に止めろよ。」

やだこった。私はスロットルを全開に吹かした。すると一気に奴らをかけ離していった。

流石に危なかった。まあ流石に追ってくるわけがない…って後ろからまたあいつらだ。

なんだよ同じくらい速度出るのかよ。ペガサス!逃げるぞ!流石に奴らは次こそブチ切れてんだろうな。

山道は私の知っているところだ。

問題ない。巻ける場所も知ってる。飛ばすぞ。またスロットルをフルに吹かした。

一気に七千回転を超えてそのままコーナーを攻める。こんなのリトルグランプリ以来だ。

久しぶりだがまだ腕は鈍ってない。いける!流石に横の分岐の道ですかさず森が深い方へ行く。

そしてそのまま山を走る。まだ微かに見えるが大丈夫だここで巻ける。

そのままアクセルを戻し、クラッチ切って、リアブレーキを踏んで一気に傾ける。そして一気にドリフトターン!!

反対に向きを変えて一気に奴らの方にかけていく。ここの道は狭い。あいつらも自分のバイクが傷つくのを嫌がるだろう。

そのまま押し切る。

さっきの群れと近づく。そして一気に空いている端をせめた。

「なんだあいつ!!…危なっ!!激突する気かよ!!」

巻いた。

あの寮だとUターンも容易くはない。そのままのスピードで突っ切り、基地に戻る。もう後ろには奴らは見えない。

そして工場及び訓練区域に入り、巻き切った。そしてゆっくり減速し、山道を降りて寮に向かう。

その後走り続けて三十分後、寮に着いた。ペガサスをしまい、一旦一息ついた。危なかったもんだ。

だが、とてもなぜか楽しかった。2度はやりたくはないがあれは気持ちいいし、楽しかった。

ペガサスもあんだけ走ってご機嫌だ。さて、楽しいこともしたことだし、寝支度整えて寝ますか。おやすみぃ!!

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~インディバル・デイ~ 最初の四日間 灰狼 @Hairow-001

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