日帰り! 広島・恋バナ・あなご飯

ゴオルド

「久しぶり。広島に遊びにおいでよ。話があるんだ」

 疎遠だった友人に会うために、広島に行った。


 その友人とは小学校の同級生で、高校あたりから付き合いが途絶えていたのだが、社会人になってから急に連絡してきたのだ。いまは広島に住んでいるのだという。私はそのころ東京にいた。


「よおゴオルド、広島に遊びにおいでよ」

「うん、いく!」


 というわけで、詳しく事情も聞かずに、私は広島へと旅立ったのであった。


 広島に到着して、私が真っ先に向かったのは、あなご飯の店である。いやもう、噂に聞いて以来、ずっと食べたいと思っていたのだ。

 お店の列に並ぶこと1時間ぐらい。待たされたのもあって、運ばれてきたあなご飯はきらきらと輝いて見えた。甘辛いたれのかかった穴子は香ばしく焼かれて、ごはんの上に品良く並んでいる。身はふっくらしていてクセがない。脂が乗っているのに後味はさっぱりしている。夢中でかき込んだ。想像の10倍美味しかった。最高だった。また食べたい。


 あなご飯に満足した後は、厳島神社に参拝した。たまたま干潮だったのか、鳥居まで歩いていけた。本殿ではちょうど結婚式も行われていて、思いがけない幸運に行きあえたような、なんだか幸せな気持ちになった。


 その後、鹿を見て、もみじ饅頭を試食し(美味しい。帰りに買うことを強く決意)、穴子のおつまみ「アナゴロール」を買った。アナゴロールとは、穴子をぺしゃんこにしたような干物……? 味が濃くて、ビールのおつまみに最適なやつだ。

 私はアナゴロールは広島にしかないと思っていたのだが、その後、意外とどこの観光地でも見かけることに気づいた。きっと日本中で大人気なのだ、アナゴロール。


 さて、このあたりでようやく友人登場である。


「久しぶりだな、ゴオルド」

「友ちゃん! しばらく見ない間に……ロリータになったんだね……」

 友人はロリータファッションに身を包んでいた。

「なんで私に連絡してきたの? 宗教? ビジネス? 借金?」

 私はオブラートに包むということを知らない女である。

「いや、そんなんじゃないよ。ただ失恋の話を聞いてほしくてさ。かたっぱしから友人に連絡してみたけど、独身あるいは彼氏ナシなのがゴオルドだけだったんだわ。モテない女同士、語り合おうじゃないか」

「お、おおう……」

 友人もオブラートってやつを知らないみたいだ。


 どうやら友ちゃんは「男は女を見る目がない」という話をするために、私を広島まで呼びつけたようであった。



 4時間以上。

「男は巨乳が好きなのだ。乳がなければ話にならないのだ」

 という話と、

「男は若い女が好きなのだ。若くなければ話にならないのだ」

 という話を聞いた。

 あと、

「どういう男が理想なのか」

 という話をした。

 友ちゃんの理想は、尽くしがいのあるドSな男とのことであった。幸せとは縁遠い趣味をしているのではあるまいかと思われるが、そういう性癖なので仕方がないのである。こればっかりはもう。


 そんなこんなで、なかなか濃い4時間を過ごした。最初はカフェに行ったのだが、途中から公園に場所を移して、ハトを見ながら語り合うこととなった。友ちゃんのストレス発散になったのなら良いが。



 さて友人と別れて、ひとりになった私は、広島といえばお好み焼きでしょう! というわけで、お好み焼きを食べにいった。

 感動した。素晴らしい。今まで私が食べてきた「広島風お好み焼き」というやつとは全然違う。薄い生地で挟み焼きにされた千切りキャベツのふわっとした口当たりと自然な甘み、麺と卵に辛めのソースがよく合っていて、もう最高。また食べたい。


 そこで帰る時間となってしまった。原爆ドームに行けなかった。友人との話が4時間になるとは思っていなかったのだ。


 また行きたいな、広島。

 ちなみに友ちゃんは、今は広島にはいないし、どこでどうしているのかもわからない。また電話してきてくれないかな。どこへでも会いにいくよ。ついでに美味しいものも食べたいし……っていうか、そっちが主目的だよね、ははは!


<おわり>

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日帰り! 広島・恋バナ・あなご飯 ゴオルド @hasupalen

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