心緒をめぐらす夏――儚きを思召す逍遥として


作業所へ行く準備の最中のささやかな心うつり。

夏の存在を鼓膜という楽器として思わせるうだるような鳴蝉。
空蝉としてその儚き生命の先に映る、生まれかわりの摂理。
わずかな時でさえ、沸き起こる思念は絶えない。

恨みこそすれ、決して危害を加えることのない蝉への思いを綴ったひと夏の掌編。