第46話 魂白剣の力
「———マジか。アレス……アイツだけ頭1つ抜けてるな」
遥か上空へと吹き飛ばされた俺は、未だ痺れる手をプラプラさせながら呟いた。
どうやら奴の言う通り、神というモノを少し舐めすぎていたのかもしれない。
因みに、アレスの攻撃を防いだ剣はあまりの力に耐えきれず刀身の半ばから折れてしまった。
一応本物ど同等とまではいかないものの、殆ど大差ないくらいの硬度はあるはずなんだけど……まぁ直ぐ新しいのが創れるので問題ないが。
「本当は時間魔法士と戦う時のために魔力を温存しておきたかったが……、チッ……魔力を回復できる物があるのか誰かに聞いておけばよかったな」
ちょっと魔力を温存しながら3人を相手するのは無理そうだった。
勿論手を抜いていた訳では無いが……こっちもそれなりに本気を出さなければ、殺られるのはこっちだ。
「ふぅ……よし」
再び剣生み出して柄を握る。
重力に従って落下する中でアレスを剣身一体の効果の1つである【魂眼】で捕捉すると———剣を大きく振りかぶる。
同時に、落下する身体から膨大な白銀の魔力が溢れ出し、振りかぶった剣に生きているかのように絡み付いた。
白銀の剣が光り輝く。
「———【概念開放:斬】」
虚空に向けて剣を振るう。
——————……。
しかし、特に何も起きない。
そう誰もが思ったであろう次の瞬間———俺の特殊な瞳によって可視化された莉央の身体の中にある2つの魂の内、アレスの魂だけが真っ二つに斬り伏せられる。
勿論莉央の身体には何の変化も見られない、が。
「ッッッ!?!? クソッ……こ、これは予想外だ、ぜ……」
アレスが苦々しく顔を顰めながら呻くように呟くと、金色の魔力が霧散する。
同時にアレスの魂が消滅し、莉央の魔法少女の衣装が解けたかと思えば、ふっと身体の力が抜けた様に崩れ落ちる。
その様子を確認した俺は、魔術陣で空中に足場を創ると。
「———頭でもぶつけたら危ないからな」
刹那の間に数百メートルを移動し———莉央の頭が地面に付く前に手を添えた。
そして、優しく抱き上げる。
あれほど強かったアレスに身体を乗っ取られていたにも関わらず、魂は勿論、その身体は何ら負傷していなかった。
この軽い身体がどれだけ頑丈なのか物凄く気になるが……。
「やっぱりそう来るか」
俺は、いつの間にか眼前に迫っていた稲妻を、莉央を抱き抱えたまま寸前の所で避ける。
一筋の雷光は俺の真横数ミリを通り過ぎ、爆発。
———ズガァアアアアアアアンッッ!!
壁に数十メートルにも渡って巨大な穴を開けると共に、研究所の崩落が始まった。
重低音と共に地面が揺れ、周りの天井という天井が落ちてくる。
俺はこのままでは崩落に巻き込まれると思い、即座に天井に空いた穴から脱出。
そんな俺を追い掛けるように、スカジと佳奈を担いだトールが次々と穴から脱出してきた。
「待て、絶対に貴様だけは逃さん!!」
「うおっ!?」
スカジが手を翳したかと思えば、今までとは比べ物にならないほどの魔力が籠められた直径10メートルはありそうな巨大な氷岩がとんでもない速度で射出される。
俺はその質量感に思わず声を上げ、魔術陣で空中に足場を創ると。
「———はッ!!」
「!?」
裂帛の声と共に氷岩に突っ込んで魔力を籠めた剣で斬り伏せる。
まるで豆腐の様にスパッと両断された氷岩。
しかしまだ何が起こるか分からないので、俺は周りに浮遊させた剣で粉々になるまで斬撃を浴びせた。
「ふぅ……あ、危なかったな……」
「貴様、アレスに何をしたッッ!?」
氷岩を斬られたことを全く気にした様子のないスカジが、空中に先程の同じくらいの大きさの氷岩を幾つも停滞させ、憤怒に顔を染めて激昂する。
その横には、此方を無言ながら強大な殺気の籠もった瞳で見据えるトールの姿もあった。
俺は2人に鋭い視線を向けたまま、短く返す。
「魂を斬った」
「なっ———!? 神の魂を人間が斬るなど不可能だッ!!」
「不可能じゃない。俺の剣———【魂白剣】が司る概念は、【斬】。例え相手が神でも悪魔でも、アンデッドであっても斬ることが出来る」
まぁその分概念を使う時はバカスカ魔力を使うから迂闊に使えないんだけど。
今の俺の魔力量だと3、4発が限界といったところか。
しかしこれこそが時間魔法士を斃す方法であり、1ヶ月の間に絶対に使えるようにならなければいけない力だった。
また、これこそが、剣聖が世界の全てを敵に回しても対抗できていた理由の1つでもある。
「……貴様は、一体何者だ……?」
何とか振り絞って口に出した様な詰まったスカジの言葉に、俺は応えた。
「俺は……剣聖の意志を引き継ぐ者だ。さぁ、あまり時間がない。急いで終わらさせてもらうぞ」
莉央を抱いたまま、片手で剣を、周りに無数の剣を浮かばせる。
そんな俺の姿に、スカジが露骨に顔を顰めた。
「チッ……傲慢な人間が……」
「気を付けるのだ、スカジよ。奴は人間だが……アレスを斃した男だ。これからは我も参加させてもらう」
トールがそう言うと同時に空に雷雲が立ち籠め、雷鳴が轟く。
呼応するように、スカジの周りの全てがパキパキと凍り付く。
……さて、頑張るとするか。
全身に魔力を纏った俺は、全ての剣の切っ先を前方に向け。
「【クルーエル剣術第二式:無双連斬】」
「【絶対零度】」
「【雷帝】」
3者の技がぶつかり合った。
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