第4話 十五歳の少女の独白(ボツ案)

今日は三月四日。

あと数日でこの施設も卒業。

ここを卒業した後どうするのかは、実はまだ定かではない。通信制の高校に通うことにはなっているが、これも自ら望んで行く訳ではない。

ただ体裁として、他の同級生と同じように高校へ行くだけ。


そういえば今日、年寄りの刑事が面会に来た。タカハシとか言ってたっけな、名前も本当はうろ覚え。逮捕された時に会っていたらしいけど、全然分からなかった。

いちいちそんなの、覚えている訳ない。


会話は取り留めのないものだった。ここでの生活と、これからのことを話した。

特に今後の事については、なぜかしつこく訊かれた。

刑事は意識していなかっただろうけど、訊かれる方は敏感に分かるもの。

ここでは模範生として過ごし、高校で実技を学び、卒業後は社会の役に立ちたいと、まさに模範生の回答をしたところ、一瞬呆気にとられていたけど、すぐに笑顔になり、手放しで喜んでいた。

こうして、ありきたりの喜びをもたらす模範生を見せつけてやった。


帰り際、卒業のお祝いといって、おもむろにお菓子を置いていった。

せんべいって、まさにジジイの発想そのもの。こんなもの、十五歳の女子が喜ぶわけないけど、そこは模範生、凄く嬉しがってやった。

部屋に帰って、箱の裏に書いてある原材料をみたら、エビとカニが入っていた。

私が甲殻類アレルギーなのを知ってか知らずか。ただあの眼、奥底で笑っていないあの眼を見て、これはわざとなんだと感じた。

あいつ、私を殺そうとしたな。それか、警告として痛めつけようとしたのか。

まあどっちにしても、今はどうでもいい。


ここに入ってから、ハサミを持つことも無くなった。

もちろん入所してしばらくは、あの二つ穴に指を突っ込んで、ザクザクザクザク切りたくって仕方なかったけど。でもその気持ちも、やがて別の楽しみを見つけて、なくなった。

そう、別の楽しみを見つけたの。


面白いの、この折り紙。すごく面白いの。

ほら、この紙を折るでしょ、さらに折るでしょ、そしてまた折るの。

そしてこうして、こうやって、こうやって、ね。

すごく面白いの。

見て見て、ほら、星形になったでしょ。

スターになったでしょ。


もっと面白いものも出来るよ。

二枚の紙を使ってね、面白いことができるの。

こんどはこうやってね、もう一枚もこうやるの。

こうして、こうやって、こうするの。

それで、この二枚を重ねるの。

そしたらほら、星形になったでしょ。

スターになったでしょ。


ハサミで切らなくても、スターに出来るの。

折って折って、スターに出来るの。

それに、ふたつでスターに出来るの。

二人を使って、スターに出来るの

ねっ、すごく面白いでしょ。


あー、早く外に出たいな。


 窓の外では雨が降ってきた。雪解けも、もう間近である。

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スター かながた @kanagata

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