ナナたん 森の中
オカン🐷
森に隠す
お掃除係のヒロミさんが、一抱えもある大きなおもちゃ箱の中を拭いて、おもちゃの一つ一つも丁寧に拭いて戻していた。
「あらっ、これ?」
「ああ、使い古しのスマホをおもちゃに、 えっ、そのスマホ見たことないわね。あらっ、充電器までついてる」
ははん、お祖母ちゃんに買ってもらったというスマホはこれね。使い古しの携帯の入ったおもちゃ箱に隠していたのね。木を隠すなら森の中に隠せというセオリー通り、ナナやるじゃない。
「「そのまま入れておいてちょうだい」
「いいんですかあ」
ヒロミは訝し気に小首を傾げた。
「カズさん、現状だとナナをキッズスクールに通わせるのも、シッターさんが戻って来てくれないことには身動きがとれないし」
「そうだね、新たにシッターを雇い入れるか?」
「今週いっぱい待ってみて無理ならそうしようかな。サトリさんはハヤトのときからお世話になっていて気心が知れていていいんだけど。それでね、ナナのスマホなんだけど、このまま知らんふりしとこうかと思って」
「そうだな、ルナミちゃんくらいだろ。同年代でナナが話せるの」
ルナはカズの前に紅茶を置いた。
今日はフォションのアップルティーにしてみた。
「わあ、いい香り。そういえば、青山の店の幼児置き去り事件で入院してた、母親の記憶が戻ったらしいの」
「へえ、それで千葉に何しに行ってたの? 本当、いい香り」
カズは鼻先にティーカップを持っていった。
「成田空港に人を迎えに行ったらしいけど、その人は別の人の車に乗って行ってしまって、あとを追いかけて交通事故にあったらしいの。周りを全然見てなかったらしい」
「で、誰を迎えに行ったの?」
「それは言わないんですって。おそらく不倫相手か何かだろうって」
「そりゃ、一波乱あるな」
「子どもを置き去りにしたあたりで終わっちゃってるわよ」
「おばあちゃん、僕もスマホ欲しい」
「あら、ハヤト、ガールフレンド出来たの?」
「そんなのいないよ」
「だったらスマホいらないじゃない。ガールフレンド出来たならまずその女の子に会わせなさい」
「え~」
「あんたたちのパパは初めてルナと出会った中学生の頃から、ルナのその動向をきちんと調べていたのよ」
ルナはカズの腕を引っ張って、リビングの隅に行った。
「本当なの?」
「ママが言うことはオーバーなんだよ」
「本当なのね」
ルナは考え込んだ。
「ルナちゃん、何を考えているの? まさか日本に帰るとか言わないよね」
「うん、日本に帰る」
【了】
ナナたん 森の中 オカン🐷 @magarikado
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