第8話 SF 第2戦 大分 修正版

 第1話から第8話までは、修正版です。実はPCの操作ミスで編集作業ができなくなり、パート2として新しくページを作りました。文言や表現を一部修正しております。もう一度読み直していただければと思います。


 スパから1週間後、朱里は九州にいた。日本時刻に合わせて寝起きしていたつもりだが、やはり体調は本当ではない。

 事前にスーパーフォーミュラ(SF)のマシンに乗ることは制限されている。他のフォーミュラマシンでコースを走ったが、アクセルやハンドリングの感覚が違う。ましてや新規参入チームなので、マシンもコースもデータが足りない。他のT社のチームからデータを入手するが、それが即あてはまるとは限らない。

 フリー走行で、朱里が1分35秒台で走っていると、突然マシンが停まった。燃料ポンプのトラブルだった。他のマシンは1分32秒台で走っている。マシンの熟成の差は歴然だった。

 予選Q1。朱里はAグループで出走した。結果は1分30秒台とまずまずのタイムを出せたが、他のマシンは1分28秒台をだしている。グループの最下位だったが、トップの岩城が全体ベストの1分26秒台を出したので、Bグループの方が偶数列に並ぶことになり、朱里はビリから3番目の19位のポジションを得た。だが、タイムは最下位である。

 予選後、チームメートの山木と監督とチーフメカと作戦会議を行った。山木も予選12位と芳しくはない。同じT社でスパ帰りの小田も予選10位とT社勢はふるわない。予選上位はH社に占められている。

 監督が口を開く。

「明日は正攻法では上位入賞は厳しい。バクチをうちたいと思うのだが・・」

「バクチというと、タイヤか?」

 山木が応える。

「そうだ。明日は気温があがる。ソフトタイヤはすぐにたれる」

「だが、ハードでは前半おいていかれるぞ」

「それで他のチームはミディアムでくるだろう」

「だろうな」

 と二人の会話が続く。そこにチーフメカの高橋が口を開く。

「他のチームと同じでは勝てません。そこで2台の作戦を変えたいと思います。1台は前半勝負、もう1台は後半勝負です」

 そこで山木が応える。

「オレが前半勝負だな」

「予選のいい方が前半勝負、予選が悪い方が後半勝負となるな」

 と監督が結論を出した。そこで、山木は10周でタイヤ交換、朱里は30周でタイヤ交換をすることとなった。ミディアムは使わず、ハードとソフトを使い分ける作戦である。ただし、バクチであることには変わりない。

 

 決勝日、天候は快晴。気温は28度、路面温度は45度を越えている。ソフトタイヤを選ぶチームはどこもいなかった。ハードは朱里だけだ。

 レーススタート。朱里は1周目で後ろ2台に抜かれて、最後尾になった。作戦どおりで1分32秒程度で周回する。他のマシンと競り合うことはないので、フリープラクティスみたいな感じだ。

 11周目、チームメートの山木がピットインをし、タイヤをハードにし、ガソリンを満タンにした。ピットインまでに軽いマシンとソフトタイヤのおかげで8位にまでポジションを上げていた。ピットアウト後には実質9位を走っている。

 31周目、朱里は周回遅れになりかけていたが、ここでピットイン。ニュータイヤで追い上げをはかる。ピットアウト後には何台かに周回遅れにされていた。20位でコース復帰。だが、ねらいは上位ではない。ビリ脱出だ。

 1台はマシントラブルでリタイア。それで今は20位。

 33周目、第1コーナーで前のマシンに追いつき、スリップにつきながら走り、ダウンヒル後の右コーナーで抜けた。向こうのタイヤはへたってきている。

 35周目、またもやストレートで前のマシンに追いつき、第1コーナーで抜く。これで18位にあがった。その後は、ソフトタイヤのマージンがなくなり、ポジションキープの走りとなった。だが、今回はビリ3となった。前回のビリよりは一歩前進である。朱里もレースをやった実感があった。

 山木は10位入賞を果たした。耐久のチャンピオンもフォーミュラは難しい。小田は9位。上位3台はいずれもH社のマシンだった。次回のT社の挽回を期待したいところだ。

 次は、2週間後のスーパーGT鈴鹿。1週あくし、国内移動なので体は楽だ。山木も前回のミスを引きずっていないようだし、今度は優勝ねらいだ。


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