きっとお空の上でも
幸まる
愛しのセキセイインコたち
私は現在オカメインコと暮らしていますが、以前はセキセイインコや文鳥と暮らしていました。
一番長く一緒にいたのは、私が二十代半ばの頃のセキセイインコ達です。
ルチノーと呼ばれる黄色の子。
全身黄色で、目は赤く、嘴の横に白い毛があります。
名前はケーちゃん。
ケーちゃんとペアで暮らしていたのは、ノーマルブルーのオーちゃん。
頭は白く、身体は濃い水色。
セキセイインコの基本的特徴でもある、さざなみ模様が頭と背中に入った子でした。
二羽はとても仲良し。
ケージの中に一緒にいる時は、飼い主の私のことなんて完全無視。
常に一緒に戯れて、二羽だけの世界が作り上げられています。
ケージから出て初めて、ケーちゃんが『あれ飼い主、いたんだ?』と私を構ってくれて、オーちゃんは私の手の上で、ほんわかおっとりしていました。
そんなケーちゃんはかなりのナルシスト。
隙あらば鏡の前を陣取って、自分の姿にうっとりします。
『ああ……俺様なんて美しいの』
そして吐き戻し。
ゲロエロオロ…
セキセイインコの求愛は、餌を吐き戻して口移しで相手に与えます。
ケーちゃんは、鏡の向こうの自分に求愛しているわけです。
おいおいおい……。
側にオーちゃんがいれば、もちろん求愛します。
嬉し気に吐き戻しを受け取り、ケーちゃんを迎え入れるオーちゃん。
ちょいちょいケーちゃんが上に乗ります(交尾)。
ラブラブです。
ケンカをするところなど見た覚えもないくらい、とても仲好しの二羽でした。
そんなある日、もう一羽のインコがやってきました。
迷子のセキセイインコを、道路端で拾ったのです。
ケーちゃんと同じく、黄色のルチノー。
嘴の横の白い羽根はほとんどなく、目は黒っぽい赤。
そして、お年寄り。
おそらくどこかで飼われていたものが、何かのはずみで外に出てしまったのでしょう。
飼い主を探しましたが見つからず、結局老衰で亡くなるまで、三年近く私と暮らしました。
さて、そのお年寄りインコ。
名前はサンちゃんと名付けました。
サンちゃんはおっとりした性格で、よく人の手にも慣れていて、警戒していた最初の頃から、酷く噛んだりはしませんでした。
そんな様子の子なので、二羽とも仲良くなれそうな気がしました。
サンちゃんは最初一羽で小さなケージに入れていましたが、ケーちゃん達のケージは大きめでしたから、サンちゃんが病気を持っていないことが分かったら、一緒に入れてやろうと思っていました。
三羽で仲良く羽繕いし、チュルチュルと鳴きながら戯れる姿。
私はそれを想像して勝手にほっこりしていたのです。
そして、いざ同居お試しの日。
二羽のケージの中へ、サンちゃんをそっと送り出します。
チュルチュルと可愛く鳴きながら戯れていた二羽のインコ。
しかし、次の瞬間。
ギョヒーッ!
ピョゲーッ!
カーンッ!とゴングが鳴らされたかのように、二羽の黄色いインコが戦いだしたではありませんか!
そう、黄色いインコ、ケーちゃんとサンちゃんです。
ゲゲゲゲッ!
と激しく威嚇し合いながら、二羽は取っ組み合いの大ゲンカ!
突付く! 蹴る! 羽根は引き抜く!
ケージの底でバッサバッサ大暴れ!
慌てて二羽を離した私の手も、興奮した二羽に突付かれて傷だらけ。
元のケージに戻しても、柵越しに二羽は怖い顔でゲゲゲッ!と威嚇し続けます。
本気で怒ったセキセイインコは、つぶらな瞳をキュッと小さくして、怖い顔になるのです。
そ、そんなに相性悪いんか……。
飼い主も真っ青の相性の悪さです。
しかし、ここで疑問が。
今まで見える範囲にケージを置いていたのに、ここまで威嚇し合ったことはありませんでした。
……なぜ急に??
ふと気付けば、ケージの隅でふるふると儚く身体を震わせている子がいました。
そう、戦いに参加していなかったオーちゃんです。
怯えて小さくなっているオーちゃんに、ようやく怒りが収まったケーちゃんが近付き、おもむろに首を振って吐き戻しを始めました。
ホッとしたように緊張を解き、求愛を受け入れるオーちゃん。
柵越しにまだ怒りMAXのサンちゃんを尻目に、ドヤ顔でオーちゃんの上に乗るケーちゃん。
………んん?
もしかしてサンちゃんの横恋慕なのっ!!?
どうやらケーちゃんとサンちゃんは、オーちゃんを巡ってバトルを繰り広げたようでした。
放鳥(ケージから出して遊ばせる)してもバトルが勃発するので、常にケーちゃんとサンちゃんは別々の時間に放鳥。
オーちゃんはといえば、ケーちゃんと放鳥するとラブラブに。
サンちゃんと放鳥すると、求愛の吐き戻しは受け取るけれど、それ以上の行為は受け入れず。
プラトニックな関係を貫きました……。
そんなこんなで、微妙な三角関係を保った私の可愛いセキセイインコ達。
皆、病気をせず、老いて亡くなりました。
今もセキセイインコのイラストや写真を見る度、あの三羽はお空の上でも三角関係のままなのだろうなぁと想像して、ふっと笑ってしまうのでした。
まあ、ちなみに三羽ともオスなのですけれどね。
きっとお空の上でも 幸まる @karamitu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
同じコレクションの次の小説
関連小説
うちのオカメさん/幸まる
★171 エッセイ・ノンフィクション 連載中 111話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます