Ni-cafeのちさとさん

藤咲不可死

第1話 日曜日の朝

 高台の上にそのカフェはある。朝焼け。湖に反射する水色と桃色の朝日。霧を思いっきり吸い込んだ。


「おはようございます、今日」


 今日も一日は緩やかにスタートする。


 7時にカフェの鍵を開けた。前日から準備したパンを焼き、スライムした野菜たちと卵焼き、カツをいくつか作った。それをできたてほかほかのパンに挟んでいく。これは朝ごはんを食べに来る常連さんたちのためにつくるサンドイッチたち。


 日曜日。10時開店とはいいつつも、8時30分ちょっと前にやってくる母親と娘さんがいる。「ちいちゃ、おはよー」と元気に挨拶してくれる娘さん。最近赤ちゃんを卒業したらしく、お姉さん気取りに「よんさいだから、はやおきできるよ」と小さな手で5本の指を立てるのが可愛らしい。えっへん。


 カフェに設置されたテレビは、子供たちのためにある。朝から始まる幼女向けアニメに娘さんは釘付けで、変身シーンは動きも真似するしEDまで踊る。そろそろ私も踊れてしまいそう。「ちいちゃも、おどるの!」と誘われる。あらあら、お母さんはいいの? とたずねると「ままはへたなの」という。お母さんはスマホ片手にそんな様子を動画に収める。机の上には三分の二も食べてない、小さな子供の食べたあとがあった。残しても構わない。子供はワガママをたくさん言いながらゆっくり、たくさん食べて大きくなればいいんだもの。


「いつもごめんなさいね、迷惑ばかり」とお母さんは眉を下げる。まさかまさか。朝から元気をもらえますと口角をあげる。ちいちゃの作ったサンドイッチ、美味しかった? と娘さんと目線を合わせて聞けば、「だいすきー」と笑ってくれる。ホラ、こんなにも素敵なのだから。またお越しください。

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Ni-cafeのちさとさん 藤咲不可死 @yuruo329

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