異世界に召喚された私は予言を実現させると湯けむりに誓う

三角ケイ

第1話 異世界に召喚された私は予言を実現させると湯けむりに誓う

 天涯孤独の私が異世界に召喚されたのは就職した会社が一週間で倒産し、住んでたアパートが火事で全焼した日だった。


 全身を貴金属で着飾った王子が、人々を救う勇者を助け共に悪を討つと予言されている聖女を喚んだのは勇者となる自分だと言い、現れた私を見て怒鳴った。


「魔王討伐のため召喚したが、こんな煤だらけの女を僕が愛するはずがない!」


 何でも勇者は聖女と愛で結ばれる運命にあるという。王子に秒で殺されそうになった瞬間、私の体から突然、謎の光が放たれ、いつの間にか私は温泉のある雪山にいた。


「確かに煤だらけ。寒いし、温泉に入ろう」


 ひとまずは助かったけど、この先どう生きていけばいいのかわからない。不幸続きで不安と孤独感に押し潰れそうになった私はやけになり、裸になって温泉に飛び込んだ。




「この世界にはない魔力を感じて来てみれば……。美しい女性が目隠しも無い外で裸になるなんて感心しないな。無防備にも程があるぞ」


 突如聞こえてきた声。振り向いた先には後ろ向きで立っている男性。


 男性は着ていたマントを脱ぎ、後ろ向きのまま私に向かって放り投げた。


「これで体を隠して。直ぐに暖かい場所に行き着替えも用意する。話はそれからだ」

「ありがとうございます。優しいんですね」


 さっきの王子と大違い。気遣う姿は誠実そのもの。


「優しいだって?君は私を見ていないからそんなことが言えるのだ。私を見たら君は恐怖で泣くだろう」


 見ず知らずの人間にこんなにも親切にしてくれる人をどうして怖がれるだろうか?マントで身を包み、男性をこちらに振り向かせる。


 男性があまりに脅してくるものだから覚悟していたのだけど、そこにいたのは背が高く銀髪金眼で目鼻立ちが整った凛々しい青年だった。


「貴方、性格だけでなく容姿も素敵なのね」

「えっ?君は私が恐ろしくないのか?」


 聞けば男性は、私を召喚した国の第一王子として生を受けたが不吉とされる金眼を持っていたため捨てられたという。


 その後、魔族に拾われた男性は礼にと彼らの国に尽くした結果、手腕を買われ魔王となった。


「最近は故国の弟王子が豊かな魔族の国を奪おうとしてきて困ってるんだ。戦えば負ける気はしないけど、民の命を危険に晒したくはないし。所で君の名を尋ねてもいい?」

「私は……」


 名乗った後に一目惚れしたと告白し、抱きしめあう私達。お互い孤独で愛に飢えていた。


 妻として連れ帰ると彼が微笑み、私は自分が聖女であることを喜んだ。

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