通過駅 🚆

上月くるを

通過駅 🚆 



雨音の五感にひびく夏の暁

郭公や身近に息の欲しき朝


あぢさゐや幻影さがす通過駅

昼顔や心の振れのあやふい日


ぷつくりと百合の蕾のふくらんで

へうきんをわが旨として罌粟坊主


日輪に飛ぶよ飛ぶよとてんと虫

ハート斑の種もありぬとぞ瓢虫


臥せる子に煎じる現の証拠かな

十薬に老犬うつとりすることも


路地裏に暮らしの満ちて薄暑光

夏よもぎ驢馬の蹄のぽくぽくと


夏あざみグランドの声よく通る

おひたしにされぬ藜は杖になり


青田波の吹き寄せてゆく白き家

トラックの昼の点灯梅雨きざす


雀らの姿は見えず麦畑

蕗の葉の表と裏と翻る


短夜のセルフお灸の曲池きょくちかな

夜の薔薇や土蔵の窓の遠すぎて




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