第6話 ラストゲームの延長戦

 とうとうこの日がやってきてしまった。デスゲームの決行日である。七月二一日である今日が決行日であることを知っていたのは俺とあいつだけ。


 デスゲームの仕掛け自体は元ゲームクリエイターの計画を半分乗っ取り、もう半分はあいつがアレンジを加えた。デスゲームの参加者は肝試しの募集をSNSでかけ、廃校に誘導するというものだ。もっとも、参加者に関してはただの建前上のものである。


「現在時刻は二〇時五分、か」


 日本の法律では、誕生日の前日の二三時五九分に年をとることになっているらしい。つまりあいつは、およそ四時間後に十八歳になる筈だった。


「最期の点検をしないとな」


 アイツらが来てしまう前に全てを仕掛けておかねば。少しバタバタしてしまうが、それは仕方がない。本来は二人でするつもりだった作業を俺一人でこなしているのだ。


 コツ、コツと足音が静かな校舎に鳴り響く。窓の外を見ると既に日は沈みきっており、月が出ていた。いくら夏とはいえ、二〇時にもなれば暗い。


 今さらだが、この仕掛けで大丈夫なのだろうか。アイツらが素直に真正面からデスゲームを受けてくれるとは限らない。窓を割って逃げるなど強行突破されると面倒だ。あいつが調べた感じだとアイツらの身体能力はそこまで高くないらしい。


 まあ、逃げたとしても刺し違える覚悟で追いかけるが。それでも逃げられてしまった場合は社会的に殺した後に地平線の果てまで追いかける所存だ。


 仕上げに正門の前の表玄関以外の鍵を破壊して出られないようにする。あとは玄関に待機して。


 人影が見えてきた。どうやら到着したようだ。


「こんばんは」


 そしてさりげなく鍵をしめる。が。


「嗚呼、なるほど」


 え。今の一瞬で何かに気付かれた?怖すぎるよこの元ゲームクリエイター。


 だがその後は先程の怖い声とは裏腹に何か言われることもなく、無事に教室にたどり着くことができた。さて、そろそろ予定の時間だ。


「ああー、テステス、マイクテスト」


 校内放送が流れ始める。あらかじめ録音してあったあいつの声だ。そういえば、コイツらとあいつが直接会ったことはなかったな。コイツら、聞き覚えのない声に困惑している。


「これより、デスゲームを開始します」


 一人はビクリと震え、一人は愉しそうに笑い、一人は怒りに震えているようだった。少なくとも現時点では、到底このゲームが復讐になるとは思えない。


「オレのゲームを汚しやがって……!」


 どうやら完璧主義者のプライドに傷をつけたらしい。これなら一ミリくらいは復讐成功かも。


「デスゲームでプレイヤーは命懸けだった」


 あいつの声が鳴り響く。


「なら、製作者側が命を懸けるのも筋というものだろう?」


 あいつは死ぬ間際までデスゲームを作り続けた。この言葉通りに命を懸けたと言えるだろう。俺だって、三年前からずっと死ぬ覚悟は出来ている。


 ここでふと思う。あいつは最期のときまでデスゲームを作る三つ目の理由を教えてくれなかった。こちらが聞いても、『僕が理由を伝えなくてもきっと達成できるから』とよく分からないことしか言わなかった。


 分からない三つ目の理由より、今は二つ目の理由の復讐を達成することに力を入れよう。


「さあ、三年前のゲームの続きを始めよう」


 あいつの音声を合図に、ラストゲームの延長戦が開始した。








──ラストゲームの延長戦


 

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デスゲーム製作委員会 睦月 @mutuki_tukituki

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