忘れられた三冠馬のジョッキー

@kaminetu

第1話

「さぁ第四コーナーを曲がって最後の直線に早くも入ったのはチョウセンタイが大逃げ。それを懸命に追うベテラン佐々木竜磨と共にササキが迎え撃つ。ですがチョウセタイがリードを引き離す。これは凄いもう止まる事はない。この走りを神次元と言うのでしょうか?最年少ジョッキーの加賀山直人が牝馬でクラシック三冠を初制覇しました」


 盛大な拍手と共に讃えられた。だがこの馬は最初から最後まで強かったのかと言うと違う。この馬はこの後一回も勝てずに終わる。それも二桁の順位で完敗をして引退した。だがこれはこの馬の話ではない。


 この話は加賀山直人と名の男の話である。そしてチョウセンタイが引退をして何年かがすぎた。


「なぁ聞いたか。なんとお前が乗っていたチョセンタイの子供を騎乗させてもらえるんだ。羨ましいだろう」

「ああよかったなあ」

「なにくらそうな顔で言っているんだ。お前がチョウセンタイでクラシックから勝ってから気合いを感じないぞ」

「そうだな。夢も叶ったし、俺ジョッキーやめるわ」

「お前まだあのことを引きずっているのかよ。誰も責めないとお前のこと」


 そう彼はジョッキーを辞める。この決断をしたのは丁度その時だった。ジョッキーを辞めた彼だがG1で買った金はとうに消え去りなにも残らなくなった。


 彼が無意識に競馬の中継を流れているのを見た。もう彼が諦めた世界。だが彼には未練はないそう思っていたはずだった。


「スルスルとあがってきたのはササキの子供ナオトが飛んでくるがそれでも届かないと笑うように。なんと外からあの三冠馬チョウセンタイの息子センタイがグッとあがってくる。まるでイナズマかの走りであっさりとナオトを抜いた。これはもう凄い、1馬身、2馬身、とググンと引き離してゴールイン。これは5馬身は離れているでしょう。なんとダービーで世界レコードがおきました。なんと……秒ですこれは強かった」


 彼から涙が流れてきた。その理由はチョウセンタイが骨折したのだった。それは菊花賞を終えて有馬記念だった。有馬記念の調教に参加した彼は違和感を感じた。反応は良いのだがとてもレースで勝てる出来ではないと思いレースを回避したほうがいいと願い込んだ。


「わかった。検査はしよう。だがなにも以上はないならレースは回避しない。ここで勝つと無敗のG16勝と言う称号が貰える。ここはなんとしても勝って海外に力を見せつけたい」


 だがチョウセンタイは検査の結果以上はなく、チョウセンタイはレースに参加することとなった。レースに出たチョウセンタイは絶好調に見えたが、無理して威張っているように直人は感じた。


 それで何度か出走取り消しをお願いしたが頷くことはなくレースは始まった。スタートは2番手につけて絶好のスタートをきった。本当なら大逃げして観客を沸かしたかったがとてもではないが怪我をしているかもしれないと思った直人は無茶はさせなかった。そしてスタートして1000メートルを通過した時だった。チョウセンタイに異変が起きた。それに気づいたのは直人だった。直人はスピードを緩めて最後方にまで落ちた。直人は「止まれ」というとすんなりとチョウセンタイは止まった。


「何やっているんだ絶好の機会じゃないか?」

「今のは判断ミスだろうあそこからでも行けるって」

「まさか怪我してないよな?」

「そう言えばインタビューの時の直人浮かない表情していたよな」

「まさか」


 とファンも愚痴からケガをしていると思って騎乗を止めたんじゃないかと言う考えに変わり、ファンはすぐさま謝ったり、悲しんだりしていた。一方でレースはチョウセンタイを関係なしにレースは続く。


 佐々木がササキを動き出してG1ではずっと2位と言われたササキが勝利した。それも大差を開いての勝利だった。


 直人の判断は正しく直ぐに検査をした結果骨折をしていて手術が必要だった。それも検査では気づきやすい場所だったが、まさかこんな場所で骨折をしているとは思っていなかった。気づくのが遅かったせいプラスレースに出た結果、来年の宝塚記念に間に合うかどうかと言われるほど長いブランクを抱えることになった。


 チョウセンタイは無事に宝塚記念に復帰をしたが直人のメンタルは悪く騎手を変えて貰ったが、気性が荒くなったしまいコントロールは難しくなった。そしてどの騎手もお手上げで結果直人に戻った。


 直人が乗ると落ち着いて気性面が回復した。だが直人はレースに集中できずにやや遅いタイミングで仕掛けて、一方チョウセンタイは伸び足が伸びずに敗走して二桁順位となった。そこから先はいうのは控えよう。


 だから直人はかこにもどりたい






 

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