閑話 メイドと王妃様
「ダメです」
「なんでだ! まだ俺にはミルクが必要だ!」
「あ、またそのような言葉遣いを…! ミルクなら牛から搾った新鮮なものを飲めば良いではないですか」
「嫌だ! シーラのおっぱいがいい!」
「……はぁ。二年前のアグリー様は可愛らしかったのに、どうしてこんな風になってしまわれたのでしょう」
シーラ・イルトンは、此処ヴェルニヒン王国の王城でアグリーお付きとして仕えているメイドだ。
この仕事に抜擢され四年。毎日が忙しなく、時間が過ぎるのも早く感じる次第。気付けば年齢も20代中盤に差し迫っていることに恐怖を覚えつつも、懸命に仕事に励んでいた。
そんな彼女の悩みの種―アグリー・ヴェルニヒン第二王子―
かの王子に対して、シーラは長らく乳母としての務めを果たしてきていたのだが、もうすぐ5歳になるというのにアグリーは未だ乳離れが出来ずにいた。
さすがにそろそろおっぱいを卒業してほしい。そんな彼女の切実な願いとは裏腹に、アグリーはこれっぽっちも乳離れする気配を見せないでいる。また言葉遣いも決して良いものとは言えず、これでは教育係であるシーラの気苦労が絶えるはずもなく。一体どこで間違えてしまったのだろうかと苦悩していたある日、声が掛かった。
呼び出し人はレティシア・レ・ヴェルニヒン。
この国の王妃に当たる人物からであった。
◇
王城のとある一室。僅かに開いた窓からは暖かく優しい風が吹き流れており、室内に響き渡るのはそんな穏やかな風とチクタクと音を刻む時計のみ。城内の一室だというのに壁や家具には煌びやかな装飾は一切施されておらず、平民から見ればこの一室は王城の中で最も質素として映り、親近感を覚える類だろう。
しかし、そんな一室で彼女は長い時間を過ごしていた。
陽が空の真上に登った頃だろうか、コンコンコンっと規則正しいノックが
「シーラ・イルトンです」
「入りなさい」
「失礼します」
シーラが扉を開けると目に飛び込んできたのは、木製の椅子に腰をかけた女性が本を読みつつ優雅にお茶を楽しんでいる姿だった。
この姿をそのまま絵として写しだせば最高峰の絵画として扱われること間違いない。誰もがそう言い切れるほどの美がそこにはあった。
「どうしたのですか。扉を開けたままではせっかくの良い風が逃げてしまいますよ」
「し、失礼致しました」
目の前の光景に見惚れていたシーラは声をかけられ、ハッと我に返る。慌てて部屋に入り一呼吸置くも、彼女の心の内は嵐のように吹き荒れている。
今、シーラの眼前にいるのは、レティシア・レ・ヴェルニヒン。彼女を呼び出した当の人物、王妃様である。
そんな人物からの突然の呼び出しにシーラは気が気ではなかった。
もしかしたら何処からか、アグリー殿下の乳離れができていないことを聞きつけたのかもしれない。
そうでなくとも、アグニーの素行の悪さは城内では目立ったものだ。学業はおろか剣や魔法の訓練もサボり、毎日怠惰な生活を送っていた。その姿は神童と呼ばれる兄の第一王子と比較すれば天と地の差といえる。
となれば、やはり自分はクビを切られるのだろう。解雇だけならマシなほうで、第二王子をこんな怠惰な人間に育てあげてしまったとなると文字通り首を切られるのではないか…。そんな焦りからか、シーラの頬を一滴の汗が伝った。
本に向けていたレティシアの
「ふふふ、そんなに緊張せずとも大丈夫ですよ。なにも取って食うわけではありません。あなたを呼んだのは少し聞きたいことがあったからなのです」
「聞きたいこと…ですか」
「もっとも、あなたが危惧していることが何なのかは私も
そう言い切り、レティシアは部屋にあったもう一つの椅子に座るよう手で促した。
シーラが椅子に座ったところで、レティシアが少し困った表情を浮かべながら口をひらく。
「あの子は……アグリーは元気ですか?」
「それはもう、大変元気でいらっしゃいます。今まで風邪すら引いたこともないくらいに」
「ふふっ、アグリーの城内での行いは私も耳にしております。あなたには迷惑をかけているようでごめんなさいね」
「いえいえ、そんな! 私が悪いんです! 私の教育のせいでアグリー様があのようになってしまったかもしれないのに……」
シーラは必死に顔を横に振った。一番長くアグリーと一緒に過ごしていたのは自分だ。それなのに、あの子の生活態度を直せなかったことが悔しくて仕方がなかった。
「あなた、名前はシーラだったわね。……シーラ、あなたがこの四年間、私の代わりにあの子を見てくれて私はとても感謝しています。王があの子と会うことを禁じてもう四年。会えないけれど、
「レティシア様……」
「……あら、話が逸れてしまいましたね」
レティシアは置いてあったティーカップのお茶を一飲みすると、本題を切り出した。
「ところで、これも耳に挟んだのですが…まだアグリーの乳離れができていないと」
「ふぇ!!? は、はい!」
いきなりの質問にシーラは声を上擦らせた。咎められないと聞いていた安心感からか、気が抜けていたのもあるだろう。
「ふふふ。大丈夫よ、安心して。さっきも言った通り、別にあなたをどうこうしようって訳じゃないから」
確かに、目尻を下げ優しい表情を浮かべるレティシアからは、責めようという気配は感じられない。となれば、素直に答えても大丈夫だろう。そうシーラは決心した。
「実はそうなんです。何度乳離れをやめるように頼んでも、その気配がなくて……」
「そうだったのね……こんなこと聞くのもあれなんだけど、その…えっと」
「?」
レティシアは自分が聞くことの内容に少し顔を赤らめる。
「お乳を吸われている時って………気持ち良かったりする…?」
何か幻聴が聞こえた気がする。シーラは今しがた聞こえた内容が理解はできても飲み込めなかった。
「どうなの…?」
顔を赤らめながら聞いてくるレティシアを見るに、幻聴ではなさそうだ。シーラは極めて慎重にレティシアの質問の具体的な内容を探るべく質問を返すことにした。
「それはその…性的に感じるかどうかというお話でしょうか…?」
自分でも何を言ってるんだろう。しかしこれ以外に思い浮かばない。シーラはもうどうにでもなれという感情でいっぱいだった。もし違えば不敬罪で極刑ものだ。
「……そうよ。性的に気持ち良いか聞いているの」
真に迫る真剣な表情でレティシアはシーラを見つめた。
「そ、その…恐れながら気持ち良いです……」
恥ずかしさのあまり、シーラの声はどんどんと小さくなっていく。しかし話は止まらない。
「お恥ずかしい話なのですが、アグリー様にお乳をあげているとき、その…アグリー様はどこかエッチというか…片方の乳房は吸い上げて、片方の乳房は手で乳首を弄られたりして……」
レティシアはコクコクと赤い顔で頷きながら、ゴクリと喉を鳴らす。
「吸うだけではなく、舐めたりもしてきて…強弱をつけて舌を動かしてくるんです。そのせいで……何回か
シーラの胸はアグリーにこの四年で開発されまくり、特に乳首で達することなど容易いようになっていた。レティシアに語ったことで情事のことを思い出し、シーラはパンツを少し濡らしていく。
「それにアグリー様はお乳をあげている時、幼いながらに勃っているみたいで、その…下半身を服の上からですが、私に擦り付けてくるのです」
「…! あの子は勃つこともできるくらい大きくなっていってるのですね」
「はい…入浴の時も大きくしてらして、私に洗うよう求めたりされます」
赤裸々な告白にシーラの顔は真っ赤になる。レティシアとシーラ、どちらの顔も茹で
話はそこで終わり、暫くの沈黙のあと、レティシアが悲しそうな表情を浮かべた。
「私ね、あの人とずっとシてないの」
ぽつりぽつりと、レティシアから溢れるように言葉が紡がれていく。
「私、あの子が生まれた時にお乳をあげることができたのだけど、それがすごく気持ち良くてね。あの子にお乳をあげてる幸せと同時に、感じてもいたの。それからあの子に会えなくなって、あの人も…………だから、あの授乳の時のことを思い出しては自分を慰めていたの」
聞かれていることが恥ずかしい。そう思うもレティシアからどんどんと吐き出されていく。
「私、もう一度あの子に会いたい。アグリーに会いたい。あの子の手で私は達したいの」
普通の人が聞けばおかしな奴だと思われるだろう。けれど今まで王に相手にされず、産んだ息子にも会わせてもらえない。そんな事が重なり、レティシアの愛はぐにゃりぐにゃりと歪んでいっていた。
「シーラ、お願いがあるの」
願いは一つだけ。
「アグリーに会わせて」
無職童貞35歳クズ、王子になる 〜弱者だった俺は元魔王の力を手に入れて強者になる! 俺を見下していた奴ら、お前らの女たちも寝取ってハーレムの一員に加えてるが大丈夫か?〜 あぎとん @agito3110
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