第3話・オレが毎晩、妹からされていたコトが判明
数日間、体の違和感が続いた夜──眠っていたオレは目を開けた。
そこに手術着姿の琉世の姿があった。
オレは夢だと思いながら琉世に聞いてみた。
「おまえ、何やっているんだ?」
「あちゃ、バレちゃった」
「バレちゃったって……オレの部屋で何を?」
上体を起こそうとしたオレは、自分の体の状態を見て
オレの体は衣服を脱がされた裸体状態で、変なコードが体に付けられていて……そして腹がファスナーで開かれて手術をされていた。
「なんだ、これは⁉」
「起き上がると、内臓が飛び出ちゃうよ……じっとしていて、すぐに終わるから」
そう言うと琉世は、点滅している小型の機械を、オレの腹に埋め込んで腹の中のコードを繋いだ。
「これでよしと、完成……お腹のファスナーを閉めながら説明するね」
◇◇◇◇◇◇
琉世が、作業を進めながら言った。
「今の、お兄ちゃんの体は、90パーセント以上が人工物に交換完了しているんだよ……人工筋肉、人工骨、人工血管に人工培養神経、人工皮膚。えーと、それから。お兄ちゃんが一番大切にしている部分も人工の……オ」
「もういい! なんてコトをしてくれたんだ! もしかして、食欲が変化したり、排泄がなくなったのも琉世の仕業か!」
「うん、お兄ちゃんが飲み食いしたモノはすべて活動エネルギーに転換されるように改造してみた。お兄ちゃんは一生食物摂取で生命活動するエネルギーを得る必要も、排泄する煩わしさも無くなった。素晴らしい体になったんだよ」
言葉を失って
「今はお兄ちゃんの
組織? 戦闘員? ちょっと待てよ……いったいどうやって、小遣いも少ない女子高生が人体改造なんてできるんだ? 機材とか道具はどこから?
ファスナーを閉めて、肌色の医療隠しテープを貼り終わって、マスクを外した琉世が、思い出しているような表情で言った。
「一番最初に、眠っているお兄ちゃんの服を脱がして裸にした時は興奮したなぁ」
「おまえは変態か!」
「そうだよ、琉世は変態だよ」
◇◇◇◇◇◇
妹の琉世がどうやって、オレの体を人体改造できたのか……その疑問は、次の日曜日に判明した。
オレの家に悪の組織がやって来た。
悪の組織の総帥と名乗るトンガリ黒覆面の人物と、組織の幹部と名乗るどこかのコミックイベント会場以外では恥ずかしいコスチュームを着た女性と、全身タイツで構成員〈俗称・戦闘員〉と紹介された数名がオレの家にやって来て両親と面会した。
トンガリ黒覆面で、ゆったりとしたマントのような服を着た総帥が、菓子箱を両親の前に差し出して言った。
「どうぞ、お受け取りください。近所の和菓子屋で買ってきた季節の和菓子です……薬物は混入してありませんから」
「これは、御丁寧に」
頭を下げる父親。父さん、悪の組織に頭なんか下げるなよ。
「単刀直入に言います、娘さんの琉世さんの才能は素晴らしい、ぜひとも学校を卒業後は、我が組織で怪人制作を」
総帥と名乗る怪しい男の話しだと。
琉世とはインターネットを通じて知り合い、琉世の才能に惚れ込んだ総帥は。
改造用の機材や道具のすべてを琉世にバックアップしていたらしい。
(道理で、小遣いの範囲を越えた改造医療器具や改造機器を、高校生の琉世が入手できて、人体改造を処術できたワケだ)
怪しげなメイクをしている女幹部が言った。
「琉世さんは、お兄さんを最高のお兄さんにしたくて、改造したんです。なんでも醜い怪人やヒーローにするのは抵抗があったとか……お兄さんをヒーローに改造すると、自分と対決するコトになるかも知れないって言いまして……琉世さん、いい子や」
コーヒーを飲みながら総帥が言った。
「どうも、お兄さんは組織に対する忠誠心もないようなので怪人には不向きのようです。ヒーローの正義感も戦闘員の忠義も無い……改造された一般人です」
立ち上がった女幹部が言った。
「少し確かめさせてください」
女幹部と戦闘員がオレのシャツをめくり上げて、オレの胸部と腹部を露出させる。
「やめろぅ、なにするんだ!」
オレ怒りの感情が、胸部と腹部、顔面に手術痕を浮かび上がらせる。
オレの手術痕を見て、手を叩いて大喜びをする悪の総帥。
「素晴らしい! セオリー通りの改造です」
琉世がオレに抱きついて言った。
「お兄ちゃん、大好き! ずっと琉世のカッコいい最高で理想のお兄ちゃんでいてね!」
オレは妹の歪んだ兄愛に戦慄した。
~おわり~
マッドサイエンティストの義妹が毎晩オレの腹のファスナーを開けて人体改造をしに来るのだが? 楠本恵士 @67853-_-
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