第2話・学校の体育授業でオレの身体能力が……異常な数値に?
学校の体育の授業男性更衣室──上半身を脱いで体操着に着替えている時に、オレの隣で着替えていたクラスメイトが、オレの体を見て驚きの声を発した。
「おまえ、いつの間に、腹の筋肉が割れて? 数日前はそんなんじゃなかっただろう?」
「えっ? 腹筋?」
オレは自分の腹を触る……なんだ、これ?
オレの腹筋が理想的な形に隆起していた、そればかりかオレの胸筋や背筋も発達していた?
(なんだ、この体?)
腹を押してみると、自然の筋肉ではない違和感があった……まるで人工物のような違和感が。
◇◇◇◇◇◇
とりあえず自分の体の違和感に戸惑いながらも、オレはバスケットボールの体育授業に参加した。
体育館でオレは、信じられない場面に次々と遭遇した。
人間離れした跳躍力、ダンクシュートも軽々決まる……そればかりか、高速ドリブルでパスをした味方のクラスメイトの体は、オレからのパスを受けると壁に吹っ飛んで骨折した。
クラスメイトが小声で「化け物」と呟く、そんな声が遠方からはっきりと聞こえた。
◇◇◇◇◇◇
オレは放課後……学校の図書館で人体図に描かれた筋肉図と、自分の腕を見比べた。
「やっぱり、なにか筋肉の配置が違うな……俺の腕?」
腕だけじゃなくて、足も筋肉配置が、本の配置と異なっていた。
(なんだコレ? 自分の体が自分のモノじゃないような、この変な感覚は?)
突然、耳の中で妹の声が聞こえた。
《お兄ちゃんダメじゃない、まだ完成していないんだから……自分の体のコトを調べちゃダメ》
図書館の中を見回しても、琉世の姿はなかった。
「空耳? かな」
◇◇◇◇◇◇
家に帰ったオレは、リビングのテーブルの上に画面が直った、スマートフォンが置かれているのを見た。
「修理、早かったな?」
琉世は玄関にスニーカーが置いてあるところを見ると、自分の部屋にいるらしかった。
オレが修理されたスマートフォンを手にした時に玄関のチャイムが鳴って帽子を深めにかぶった宅配業者が、ドアを開けた玄関外に立ってた。
「琉世さんにお届け物です、受取のサインをお願いします」
オレが受け取りのサインをすると、宅配業者は、なぜかオレの顔をマジマジと見て言った。
「あなたが、琉世さんのお兄さんでしたか……へーっ、あなたがねぇ」
意味深な言葉を残して、宅配業者は去っていった。
(最近、やたらと琉世宛の荷物が届くけれど?)
手にした荷物には『医療精密機械』とだけ書いてあった。
オレは二階の琉世の部屋の前に、届けられた荷物を置くと。
「何か届いたぞ、ここに置いておくからな」
それだけ言って、琉世の部屋の前から自分の部屋へともどった。
◇◇◇◇◇◇
数日後の朝──オレは体を走る激痛で目覚めた。
「いてぇぇ、なんだこの痛み」
上半身裸になってみると、体に線が走り赤い血の塊がポツポツと線の上に浮かんでいた。
(虫にでも刺されたのかな?)
下腹部がやけに重かった。
オレはこの時、自分も体に起こっていた、とんでもないコトに気づく。
「ここ数日間、ぜんぜんトイレに行っていない? 排泄をしていない?」
ここ数日、なぜか満腹感も空腹感も起きなかった。
友人とファストフード店に行って、つき合いで大量の食べ物を飲み食いしても、なぜか腹八分目で腹一杯にはならなかった。
(あれだけの食べ物……オレの体の中で、どこに消えているんだ?)
◇◇◇◇◇◇
数日後の夜──眠っていたオレは、間近で聞こえた琉世の「あっ、しまった」の声に夢の中で薄目を開けた。
眼の前に手術着姿の琉世の顔があった。
琉世はオレと目が合うと「ヤバッ、お兄ちゃん目を開けている」
そう言って、オレの口元に麻酔で使う吸引マスクをあてがった。
「はい、お兄ちゃん大きく息を吸って」
息を吸い込んだオレは、夢の中で眠った。
◇◇◇◇◇◇
翌朝──オレは痛む頭を押さえながらベットから上体を起こす。
「なんか変な夢見たな……琉世に手術されている夢」
リビングに行くと、琉世がソファで爆睡していた。
(また、一晩中ゲームでもしていたのか?)
オレは体に異物がインプラントされたような不思議な感覚のまま、学校に向かった。
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