マッドサイエンティストの義妹が毎晩オレの腹のファスナーを開けて人体改造をしに来るのだが?
楠本恵士
第1話・オレの体が変だ何かされている
オレの義理の妹の『
たまに家のリビングにいる時もあるが、何か難しそうな本ばかり読んでいる。
オレがチラッと見た本の背表紙タイトルは。
『あなたでもできる初心者向けの失敗しない人体改造』
『絶対に朝まで気づかれない。改造手術麻酔の処方』
『断捨離・脳改造いらない記憶は捨ててスッキリ』
『怪人製造か改造ヒーローか……作るとしたらどっち?』
『改造人間の体内に入れても安全な小型原子炉に代わるエネルギー装置』
どれも危なそうにタイトルの本ばかりだ。
オレが最初に、妹の異常さに気づいたのは、オレが浴室で風呂イスに座って体を洗っていた時だった。
脱衣場の方から琉世の声で。
「お兄ちゃん、お風呂入っているの? へぇ~お兄ちゃん、こんなパンツはいているんだ」
その声が聞こえた直後、浴室の扉を開けて顔を覗かせた妹が言った。
「ごめ~ん、お兄ちゃんがお風呂に入っているなんて、気がつかなかった」
いやいや、おまえ最初から知っていて浴室の扉開けただろう。
「扉閉めろよ、オレがフロに入っているの知っていただろう」
琉世のヤツはなかなか扉を閉めようとしなかった、そればかりかオレの裸の背中を見ている琉世が言った。
「お兄ちゃんの背中って、男らしい背中だね」
「扉閉めろって……」
振り返ったオレの目に映ったのは、一生忘れられない義理の妹のオレの体に向けられていた視線だった。
異性の体に対する好奇心とは違う……実験動物でも見ているような妹の目に、オレはゾッとした。
◇◇◇◇◇◇
オレが体の違和感に気づいたのは、数日後の朝だった──最初は寝具の上にポッとあった、数滴の血痕だった。
(寝ている間に、どこかにぶつけたのかな? なんとなく、頭と体が重いな)
そう感じながらもオレは着替えて、学校へ登校する準備を進めた。
リビングの前を通ると、琉世がソファの上で倒れるようなポーズで寝ていた。
(なんだ、一仕事終えて疲れきったような感じの眠り方だな? 琉世のヤツ、ゲームでも一晩中やっていたのか?)
水を一杯飲もうと、キッチンに行って硝子のコップを持ったオレは、指先に違和感を覚えた。
(なんか、自分の体じゃないような……わぁッ⁉ コップが?)
オレが持ったガラスのコップが、手の中で割れた。
手の平を見てもケガはしていない、別のコップも続けて握ったら割れた。
「なんだ? この感覚? 力のコントロールができない?」
幸い家のキッチンの蛇口は手を近づけただけで、水が出るように切り替えもできたので手ですくって水は飲めた。
不思議と腹は減っていない、オレはそのまま玄関に向って外に出ようとドアノブを回した途端、ドアノブがいきなり壊れた。
「うわぁ、やべぇ……寝室で寝ている母さんに、伝えておかないと」
オレはLINEで知らせるために、スマートフォンの画面を指で触った。
軽く押したつもりなのに、なぜかスマートフォンの画面が指先で穴が開く。
「ウソだろぅ!」
オレは穴が開いたスマートフォンと一緒に母親への置き手紙で『可能なら、修理に出しておいて』と書いてから。
ワケがわからないまま、学校へと向かった。
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