第3話 カクヨム運営部の陰謀を暴け

 私はマイクに向かって言った。


 「るしあんさん、あなたは、アホバカ永嶋良一が仕掛けた・・『読者が、つい、うっかりとハートマークを押してしまう仕組み』・・に操られて、永嶋良一の実にくっだらない作品にハートマークを押してしまうんです」


 司会の姉ちゃんが裏返った声を出した。


 「まぁ、恐ろしい! 永痴魔先生、それって、一体どんな仕組みなんですか?」


 私はマイクの前で胸を張った。


 「それはですね、五・七・五なんです」


 「五・七・五ですって?・・」


 「そうです。俳句の五・七・五なんです」


 姉ちゃんが首をひねる。


 「永痴魔先生、私、よく分からないのですが?・・・」


 私は、うんうんとうなずきながら言った。


 「ご説明しましょう」


 「・・・」


 姉ちゃんの唾を飲み込む音が収録室に響いた。


 「アホバカ永嶋良一はですね、カクヨムの作品の中に、俳句の五・七・五のリズムになるフレーズを散りばめているんですよ」


 「五・七・五のリズムになるフレーズを・・ですか?」


 「はい。例えばですね・・・アホバカ永嶋良一は、カクヨムに『ボクのよかったこと日記』という、くっだらないエッセイを連載してるんですが・・・」


 「はぁ? 『ボクのよかったこと日記』ですかぁ? タイトルからして、つまらなさそうなエッセイですね。こんなの読む人がいるんですかぁ?」


 「そこなんです」


 姉ちゃんが再び床を探すふりをする。


 「えっ、どこ? どこ?」


 私はあきれて姉ちゃんを見た。


 「さっきも言いましたが・・・止めなはれ、そのギャグ。・・それ、カクヨムキャンディーズの、この美のこさんがよくやっていて、いつも同じカクヨムキャンディーズの星都ハナスさんと楠瀬スミレさんに叱られていますが・・・今どき、そんな古いギャグで笑う人はおりまへんで」


 司会の姉ちゃんがペロリと舌を出した。


 「この美のこさんと言えば、定番のフレーズがありますね。・・『ビックらし、屁をぶちかます、のこ姉ちゃん』(ブー)」


 姉ちゃんのオナラに、私はむせて、あえいだ。


 「狭いラジオの収録室の中で、オナラをするのは止めなはれ。・・げほ、げほ、げほ・・・」


 姉ちゃんも、自分のオナラでむせている。


 「げほ、げほ、げほ・・・」


 ADの姉ちゃんが収録室の扉を開けてくれて・・・私はやっと人心地着いた。


 「はあ、はあ、はあ・・・で、話を戻しますが、アホバカ永嶋良一は、この『ボクのよかったこと日記』という最底辺エッセイに、時おり五・七・五のフレーズを使ってるんですよ」


 司会の姉ちゃんもやっと落ち着いたようだ。


 「はあ、はあ、はあ・・・永痴魔先生、具体的にはどんなフレーズなんですかぁ?」


 「はい。例えば、エッセイの第51話は、『女子トイレ、選ぶ個室は何番目?』というタイトルがつけられています」


 「キャー、何、それ?」


 「この話はですね、アホバカ永嶋良一が女子トイレの個室に入ったときにですね・・・」


 「女子トイレって・・で、でも、永痴魔先生。アホバカ永嶋良一って、オトコなんでしょ? ひょっとして、オンナなんですかぁ?」


 「実は、アホバカ永嶋良一には『オンナ疑惑』がありまして・・・それは別の機会にお話しするとして・・・このエッセイは、永嶋良一が女子トイレの個室に入っていたら、いつも、誰か女性にドアを開けられたり、ドアをノックされたりするので・・・この謎を解明するという、くだらない内容なんですが・・」


 「まあ、オトコが女子トイレの個室に入るなんて・・・いやらしい!」


 「アホバカ永嶋良一のエッセイや小説は、パンティとか、女子トイレとか・・こんな話ばっかりなんですよ。・・・で、ですね。私が注目したいのは、その内容ではなくて・・・タイトルなんです」


 「えっ、永痴魔先生。どういうことですかぁ?」


 「はい。このエッセイのタイトル、『女子トイレ、選ぶ個室は何番目?』の字数を数えてみてください」


 「はい。え~とぉ・・

  女子トイレ: じょ・し・ト・イ・レ    5文字です。

  選ぶ個室は: え・ら・ぶ・こ・し・つ・は 7文字です。

  何番目  : な・ん・ば・ん・め     5文字です。

  ええ、これって、五・七・五の俳句じゃないですかぁ!」


 「そうなんです。アホバカ永嶋良一は、こういった五・七・五のフレーズを駄作のあちこちに、意図して散りばめているんです。実は、この五・七・五のリズムは、私たち日本人の琴線に響くものがあるんです。それで、リスナーの、るしあんさんは、この五・七・五のリズムに騙されて・・・永嶋良一のくっだらない駄作に、いつもハートマークを押してしまうんですよ」


 「ぎゃび~ん! そんな仕組みが隠されていたんですかぁ! るしあんさん、永嶋良一の仕掛けに騙されないようにしてくださいね~」


 すると、ADの姉ちゃんが、またメモを持って収録室の中に入ってきた。メモを司会の姉ちゃんに手渡す。司会の姉ちゃんがメモを読みだした。


 「あっ、ここで、また、リスナーの方からお電話をいただきました。え~とですねぇ、今度は・・・ペンネーム『ブロッコリー食べました』さんからでぇすぅ。『ブロッコリー食べました』さん、お電話ありがとうございますぅ」


 私も頭を下げる。


 「どうも、『ブロッコリー食べました』さん、お電話、ありがとうございます」


 「では、『ブロッコリー食べました』さんからのお電話の内容ですが・・・永痴魔先生、はちにんこ」


 「はい、『ブロッコリー食べました』さん、はちにんこ」


 「実はカクヨムで今、『第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト』が開かれています」


 「ほぉ~」


 「それで、私は、このタイトルを見ると・・・俳句を詠みたくなって仕方がないのです。永痴魔先生、どうしてでしょうか?・・・というお電話なんですが、先生、これはどういうことなんですか?」


 私はポンと手を打った。


 「それはですね、さっきの永嶋良一の五・七・五と一緒なんです。『ブロッコリー食べました』さんが、カクヨム編集部の陰謀に引っかかっているんですよ」


 「えっ、永痴魔先生。カクヨム編集部の陰謀ですって? そんなのがあるんですかぁ?」


 「あるんですよ。カクヨムの編集部が、読者を誘導して・・・読者自身が気づかないうちに、読者を俳句と短歌のコンテストに参加させようとする・・恐ろしい陰謀が隠されているんです」


 「永痴魔先生、どういうことですかぁ?」


 「この『第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト』も字数を数えてみてください。あっ、『短歌』と『俳句』は並列ですから・・どちらか一つで・・そうですね、『俳句』にしましょう。では、『第2回カクヨム俳句コンテスト』の字数を数えてみてください」


 「はい・・え~とぉ・・

  第2回   : だ・い・に・か・い     5文字です。

  カクヨム俳句: カ・ク・ヨ・ム・は・い・く 7文字です。

  コンテスト : コ・ン・テ・ス・ト     5文字です。

  ええっ、こ、これも、五・七・五になってますよぉ」

 

 「そうなんです。これも、先ほどの、アホバカ永嶋良一の『女子トイレ、選ぶ個室は何番目?』と同様に、五・七・五のフレーズを使っているんです。・・・こうして、カクヨムの読者が、知らず知らずのうちに『第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト』に参加するように仕向けられているんです。これが、カクヨムの編集部が仕掛けた、実に恐ろしい陰謀なんですよ」


 「ぎゃび~ん! カクヨムの編集部って、恐ろしいところなんですねぇ。私、知りまっしぇんでしたぁ~💦 『ブロッコリー食べました』さん、お聞きになりましたかぁ~。『ブロッコリー食べました』さんは、カクヨム編集部の陰謀に引っかっているんですよぉ。カクヨムの編集部の陰謀に乗らないようにしてくださいねぇ~」


 「その通りです。『ブロッコリー食べました』さん、注意してくださいね」


 「で、でも、永痴魔先生。アホバカ永嶋良一も、カクヨム編集部も・・五・七・五のリズムを持つフレーズを使って、読者を誘導している訳ですが・・・そもそも、どうして、五・七・五のリズムに読者は誘導されるんですかぁ?」


 私は緊張した顔になった。


 「そこなんです!」


        (つづく)

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