友情の中に微かな淫靡さが混じる、繊細な百合小説

この小説のジャンルをあえて決めるとすれば、百合小説ということにはなるのだろう。主たるカタルシスは女の子同士の関係性にあり、そしてその関係は、純粋な友情と呼ぶにはいささか淫靡な匂いが漂う。
しかしその関係はあまりに繊細で、「女の子同士がイチャイチャしてるのを見たい」という明快なニーズには応えられないかもしれない。

とはいえ、私が尊さを感じるのは、男女の関係にも男性同士の関係にもない、女性同士の微妙な距離感にある。友情の中に微かな淫靡さが混じる、その瞬間にある。そうしたシチュエーションに魅力を感じる同好の志にお薦めしたい。

もう一点、私が感銘を受けたのは、大きな事件の起こらない日常的な題材を扱いつつ、日常的であるがゆえに先が読めないというスリリングさだ。本作における最大の葛藤は「高校生の進路選択」という誰にでもある話で、そこには明確な解決があるわけではない。だからこそこの物語がたどり着く先がどこなのか、最後まで予想がつかず、読み続けるしかない。

たどり着いた結末も決して突飛ではないものの、そこに至る心の動きを追うことこそが読書の楽しみであり、満足度は非常に高かった。

最近カクヨムに登録し、趣味の合いそうな小説を探していたときに、このような素晴らしい書き手を発見できたのは非常に幸運だった。これからも注目していきたい。