圧巻の構成力、人情ホラー。

まんまと作者とジャンルに騙されました。
喜助はただただ子供に害をなそうとしているのかなと思っていたところへの地震。
母が村人へ喜助の死を懇願する部分が転かなと読んでいたら、見事に大きく裏切られました。
訛りもあり少しだけ古い時代の話かと思いますが、古い時代で喜助に理解ある村人達というのは童話的でともすればリアリティがなくなってしまうところ、訛りという語り口調によって語られることで違和感がありません。
わたしのイメージする語り部は老齢の女性なので喜助の母から悲しい過去の話を直接聞いている、そんな気持ちになりました。

ホラーというジャンルであり全編通して重く陰鬱な空気感が漂っていますがその真ん中に人の善性と優しさが通っていることで読後に何とも言えない悲哀の感情が残ります。

喜助が最後に生まれてきた事への喜びを感じていたことを願って……。