第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部二十首連作

肥後妙子

夜の精に招かれた人の二十首

夜の精の館に辿り着きたれば扉を打てと招待状に


黄昏に我迷宮を訪ねおり手探り進む蔓の絡まり


夕靄の深部に住まう人あらば扉打つ音確かに聞けよ


踏み入れし薄暗き廊下夜光茸点在したり導くごとく


水中の世界に似たる日没後透き通りたる群青の庭


水面凪ぐ宵の裳裾を映しつつガラスの如き川蝦の鬚


銀色の半透明の女人来て我にすすめし夕餉の席を


大窓の傍ら坐して見ゆるれば泡立つ雲連れ月近づけり


銀の女人話す全ては汝のため星の楽器よしばし奏でよ


奏でしは星砕きたる音に似て夕餉のくつろぎビブラフォンかな


夜に浮かぶ青白き雲纒わせし川蝦フリット塩雲母なり


清らなる淡水で咽を潤せり気泡に夜気の入りし黒パン


月光の重みで落ちてきし物と説明さるる碗のハシバミ


ハシバミを奥歯で噛まん天上の味を知りたし夜の雨だれ


夜空垂れカップ満たしつ香り立つ食後珈琲珍しき品


感謝せり夜が作るる饗しは星の音楽食べるに似たり


彗星の速さで訪れし別れ微睡むうちに家路につきぬ


餞別に渡されしもの星の音を奏でし楽器の珠のマレット


人の世を訪れることも有りしとか銀の女人は月暈に似る


街角に銀の女人は現れり雑沓に消ゆ笑みを残しつ

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第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部二十首連作 肥後妙子 @higotaeko

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