水の惑星 第2回カクヨム短歌俳句コンテスト/短歌部門、二十首連作部門参加作品

平 健一郎 (たいらけんいちろう)

水の惑星 第2回カクヨム短歌俳句コンテスト/二十首連作部門参加作品

悲しみの束ねられたる花なれど抱えられたる露ならましを


観音の微笑みせう降りたる雨音に悲しみふかき花ぞ散りける


いづくにか我を手放しせせらぎにうかべ語らふ恋のうつろひ


恋人とうなばら見ゆる我となる八千代やちよのめぐり過ぎて匂へり


帰るべき故郷の消ゆるところまで月やはらかくわれら照らしき


紺碧の空に白鳥しらとり飛びたるは花の昼寝に飽きたればこそ


沈みゆく入日の果つる金箔の海まだ遠し来たれ火の鳥


詩の思ひ枯れゆくものの中に臥す黒豹のごとぬくもりの猫


唇を出でたる詩とは還らざるものなればこそ蝶の舞ひけり


ひらがなのいのち余さずさらしたるつばめよつばめ恋ひるがへり


若草の匂ひ漂ふ羽ばたきの野に降り立つはあまたの天使


ひたすらに咲きたる白さ音もなく心の底に残さず落ちよ


子をあやす聖母となりし春愁のねむりこみたる部屋を思えり


産みたきは攫われさうな桜貝 打ち上げられて はないちもんめ


ひらきたる聖書に隠す冬蝶と少女の恋に旅のはじまり


約束の君の海まで冬の旅 風花かざばな舞ひて空澄みわたり


ひと雫咲かせて膝を寄せしこと星満たしたる線香花火


酔芙蓉おもかげならばやはらかき花になりたし君はそよ風


海遠し百万本のコスモスに風の行方ゆくえをたずねてゆくか


百代はくたい過客かかくのわれに踏み絵の世めぐりて逢へり水の惑星


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