我がママ

ぱんつ07

遺書


お母さんへ





この手紙を読む頃には僕は居ません。

なので、遺書を残して逝きます。


最後まで読んでくれたら嬉しいです。





まずは僕を産んでくれてありがとう。

小さい頃からずっと面倒見てくれてありがとう。

ここまで育ててくれてありがとう。

見捨てないでくれてありがとう。

愛情を注いでくれてありがとう。








小さい頃は欲しいおもちゃがあると、すぐ買ってとわがまま言ってましたね。

買ってくれなかったときに泣き叫んで、店の中でジタバタしてお母さんを困らせました。

お店であんなに暴れていたのは今じゃ恥ずかしい思い出です。

小さい頃の誕生日プレゼントの中で一番嬉しかった狼のぬいぐるみは今も大切にしています。

ほつれたり首や四肢が取れて、泣きながらお母さんにお願いして直してくれたのも思い出の一つです。

その後汚れているからって洗濯機に入れられたぬいぐるみを見てかわいそうと泣いていたところまで覚えています。

狼のぬいぐるみを枕元に置いて一緒に寝ているのは秘密にしていましたが、あえてここに書き残しておきますね。



小学生になってからは、友達との喧嘩でボロボロになった僕の手当てをした時の事を覚えていますか。

喧嘩は数えられない程したので嫌でも覚えているかもしれませんが、僕はその中で思い出に残ったことがあります。

喧嘩っ早い僕に説教した後は大好きなアイスを食べさせてくれたこと。

ばんそうこうはヒーローものじゃないと嫌だってわがまま言って、わざわざ準備してくれた無地のばんそうこうをしまって、戦隊モノを用意してくれたこと。

ちゃんと喧嘩した理由と僕の言い分を聞いてくれたこと。

ちなみに、今じゃ売られていない戦隊モノのばんそうこうがフリマアプリで売っていたので、すぐ買ってしまいました。

使うのがもったいなくて怪我した時に使ったことはないですが、そのばんそうこうを見るたび思い出すので宝物として大事にしまっています。



中学生でいじめられて不登校になった僕は外に出ず、お母さんは欲しいゲームや食べたいもの等たくさん買ってくれましたね。

あの時は不満があるとすぐ怒って、ごめんなさい。

お母さんのごはんは美味しいのに、食べないって言ってゴミ箱に捨ててもったいないことしてごめんなさい。

それでもお母さんは怒らず引きこもっていた僕を心配してくれて嬉しかったです。

僕の反抗期はかなりひどくてお母さんには大変な思いをさせました。

物にあたって物を壊して、その処理はお母さんがしてくれて、なのにお礼もせずに僕はかなり自己中でした。

そんな僕を見捨てないでくれてありがとう。

15歳になってからは僕もさすがに焦って受験勉強を頑張りました。

通信で高校受験を合格して盛大にお祝いしてくれた日はずっと忘れません。

買ってくれたゲーム機は今も遊んでます。



高校生の頃は初めて彼女ができた僕に、わざわざお祝いのケーキを買って、お肉も用意してくれましたね。

あまりお金の余裕がないのに高級なケーキ屋さんを選んで、ごはんの準備もして家で待っていたのに、僕は彼女とデートするからご飯もケーキも要らないなんて言ってごめんなさい。

帰った後にケーキを食べましたが、高級店のケーキなだけあってとてもおいしかったです。

今では一緒に食べたかったなって思います。

一か月経った頃に彼女と別れて落ち込んでた時、欲しい物あるかと聞かれては要らないと言ってお母さんに八つ当たりしてしまいました。

静かに部屋で泣いていた時、ほっといてくれて嬉しかった反面子供の頃みたいにお母さんに泣きついて甘えたかったです。

高校生だというのにお母さんは少し大きめなウサギのぬいぐるみを買ってくれましたね。

あの時はふざけるなって怒鳴ってしまいましたが、今じゃ抱き枕の様に使っています。



高校卒業後は大学へ行かず、そのまま就職をした僕は家に帰らず夜遊びが多かったですね。

遅くなるって連絡もしないで酔いつぶれて帰った時はどれだけ心配させたかわかりませんが、僕が家に帰ってきただけで安心したお母さんの顔は忘れられません。

お母さんのどこにいるの?何してるの?いつ帰ってくるの?ってメッセージがうるさく感じてました。

僕が想像していた以上に心配してくれていたことを今になって気付きました。

あの時はすごく不安にさせてごめんなさい。

それから家出る前や遅くなる日に僕が一言連絡すると『楽しんできてね!』と返してくれた時、もっと早くこうしていれば良かったと思います。

申し訳ない気持ちでいっぱいです。

僕からのそんな連絡があることでお母さんは少しでも安心できましたか?

安心できていたら僕は嬉しいです。



でも、僕は大きな問題を起こしてまた心配させましたね。

マッチングで出会った女性の中絶費に困ってた時、お金に余裕がないお母さんが全額出してくれたのに、僕はパニックになってて感謝したかどうか覚えていません。

面と向かってしっかりお礼が言えず、お母さんの仕事用のカバンの中にお母さんが大好きなお菓子を入れましたが気付いてくれてましたか。

今更ですが、あの時はごめんなさい。

僕がちゃんと貯金をしていたら迷惑かけずに済んだのに、遊ぶためにお金を使いまくってしまったことを後悔しました。

それからは真面目に貯金をして、お母さんの誕生日の時に少し高いブランドのカバンを買いましたね。

僕にとってはたかがカバンにと思っていましたが、お母さんは嬉しさのあまりにずっと泣いてはカバンを眺めて笑っていましたね。

僕はそれを見てほっとしましたが、まだまだ感謝しきれていなくてたまに思い出しては申し訳ない気持ちでいっぱいいっぱいです。

僕と買い物行くだけなのにカバンを使ってくれていたのは恥ずかしいですが嬉しかったです。







謝りたい事ばかり残して、直接謝れなくて、ごめんなさい。

僕の性格を知っているお母さんは、分かってくれると思っています。

小さい頃からわがままで素直になれず、いつも反抗的な態度を見せてましたが、遺書だけでも正直に気持ちを書き残したいと思って書かせてもらいました。

でも、こういうのは本当はお母さんの顔を見て、ちゃんと謝りたかったなと思っています。

恥ずかしくて面と向かって謝れなかったのが、ここまで書いてみて今なら謝れる気がしています。

それでも思うだけで実行できない弱い僕を許してください。


ごめんなさい。



ただ、謝りたい事ばかりじゃないです。


僕にとっての思い出、手紙に書ききれなかった思い出、全てに僕は感謝しています。

色々もらってばかりいて、どれだけ感謝したらいいのかわからなくなるほど気持ちはいっぱいです。

僕には誕生日プレゼントや旅行のお土産、買ってくれたゲーム、ぬいぐるみ、携帯とか学費とかお金をかけたものより、もっと嬉しかったものがあります。



それはお母さんからもらった愛情です。



目に見えない愛情は、今思い出せば愛がなければできない事だったと思っています。

僕はお母さんに愛されていたのだと実感しました。

僕はお母さんの子に産まれて良かったと思っています。

本当は面と向かって伝えたかったですが、恥ずかしいのでここに書きます。


僕もお母さんを愛しています。


心から大好きなお母さん。


ずっと愛してくれてありがとう、お母さん。























そんな大好きなお母さんを刺し殺してごめんなさい。

天国で一緒に暮らそうね。






僕より。

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