ウーたん あのね

オカン🐷

大丈夫

「青山のお店に行かなくちゃ」

「ルナちゃん、エナとマナを生んだばかりだろ。そんな身体で行くの?」

「だってルナールのコピー商品を売る店が出来たって言うし、それに青山店の売り上げも落ちてるって」

「そんなに慌てなくてもオトちゃんがいるだろう」

「そのオトちゃんが心配なの」

「双子はどうするの?」


 ルナはちょっと考えを巡らせた。それは長い時間ではなかった。


「そろそろ離乳の時期だしシッターさんにお願いして、ちょっと行ってすぐに帰って来るから」

「ウーたん、ナナもいく」

「ナナちゃん、寝たんじゃなかったの?」

「アホヤマ、ナナもいく」

「そんなお兄ちゃんたちの真似しないの」


 ナナが寝るのを待ってカズに話したのに、何て勘の鋭い子なんだろう。


「ナナはベッドに入ってなければいけない時間だよ。早く寝ようね」

「ウーたん、ナナもいく。やくちょく」


 ナナは小指を立ててルナの小指にからめた。


 フフフッ

すごいなあ。グイグイ来る。


「でも、青山に行っても向こうのウーたんに会えるかどうかわからないよ」

「だいじょーび」

「何が大丈夫なのかわからないけど、ねんねしようね」


 ナナの肩に手を置いて、寝室へと誘導した。





「オトちゃん、お店が潰れたわけじゃないのに、そんな顔しないの」

「だってえ」

「道を隔てた斜め向かいに店を出すなんて喧嘩売ってるのかしら」

「名前まで『モナール』」なんてふざけてますよね」


 以前、キッズルームにしていた奥の部屋で二人は額を寄せ合った。

 店も心配だったが、オトのことが気がかりだったのだ。

 ナナはルナミもいないのに上機嫌だった。

 

 しばらくするとチーフが来客を告げた。

 ヨッシーのママ、ミオさんがルナミを連れて来てくれた。

 ミオさんが夜勤明けで仕事が休みなのでルナミは保育園を休んでいた。

 どうやらナナとルナミの間で話は出来上がっていたようだ。


 いつの間にスマホを使っったのだろうか。


「ウーたん」

「ナナたん」


 二人は恋人同士の再会のようにハグしあった。

 

ルナはモナールに偵察に行ったが、ベニヤ板で飾りたてられた、いかにも安普請の店舗に客が満足感を得られるはずがない。物珍しさだけで集客するのは最初のうちだけだ。

 ルナールに足を運んでくれるお客様はチョコレートだけを買い求めに来てるのではなかった。


「オトちゃん、すぐにお客様、戻って来るわよ」


 取り繕ったのではない優しい笑顔が戻った。




 帰国して祐奈から電話があった。

 ルナミが風疹にかかかったと言う。

 保育園で蔓延していると言う。

 ナナのことを心配してくれたけど、今のところその兆候は見られなかった。


 ところが、ほどなく風疹はナナから始まって兄たちの隼人、蒼一郎に感染していった。


「カズさん、風疹かかっているわよね」

「えっ、どうだったかな?」





        【了】




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ウーたん あのね オカン🐷 @magarikado

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