経由地：春

経由地：春

満員の電車がホームに残したもの押し入りできないやさしさ二つ

ニューデイズ使う人皆新しい日々を迎える顔ではないな

ビル上のクレーンが夜引き上げてこずには東京暗転できず

東京の夜景も俯瞰で取捨されてきれいな思い出だけになってく

皿洗い中をも主人公にする紐引くタイプのスポットライト

シャワー浴びタイルの溝から排水溝旅させ涙を曖昧にする

胸いっぱいぬくい空気を吸っていた　君の口から吸ってしまった

まるがおで君はプールにわんわんと放られた輪っかぐらいに自由だ

新発売おいしさupのチョコぐらい押し付けがましい自信の新卒

握り飯血肉にせむと二つ買いコンビニ出るとひかりがまぶしい

はじけるよ　噴水そばの子らの帽子　ミックスベジタブル食べたいな

慣性で歩き慣性で息する日々だな摩擦係数０の

オフィスビル窓の上部は誰も見ないけど輝きはひときわつよい

僕たちは二人で鷹になるんだよ大空たかくひろくとぶんだ

下垂体だけで考えつきそうな広報アニマル群雄割拠

「移動より輸送やね」君窓側で声をひそめる席は倒さず

ポッキーにはチョコがぎっしり詰まってて穴から夏は見通せません

「といれ」と恥ずかしげもなく言った君晴れてすぽんと夏になったね

ビルとビル向き合う非常階段で井戸端会議　速乾大阪

おとしもの避けて混む夏準急で床のポカリのキャップは涼しげ

空いててもぴったり閉じた君の足網棚から見るビリケンさんが

光と川高層ビルが溶け合える大阪まるっと腕を広げる

川の上跳ねてく石は水を切るというよりなにかを縫ってくようで

「しゃあないやん。蛍の光は外国人にはムーディなだけやから、ただ。」

音なぞる溝を失くしてCDは無音再生　泳ぎだす夏