[短歌二十首連作]薔薇の痣

階田発春

薔薇の痣

暴風雨吹き荒ぶとき閉ざされたあなたの中の獣性を知る


エコー 青く光る血管 僕はただ世界を複製するだけの機械


万華鏡こわれてゆくね透明なオゾンの向こうで溺死する蝶


そうね、あれがアルタイル 流れていく星をそっと指で崩して


僕たちは踊る、叫ぶ、狂いだす 淡い光の呪いの中で


泡という泡にわたしは流されて復讐するは全身にあり


どこまでも切り刻む春ぼろぼろの体で愛を伝えてみせろ


性別欄ぱらりと越える首筋にユダのしるしのタトゥーを入れて


遺伝子の螺旋階段へし折って背負う罰ならわたしが決める


初冬のカーテンレースを焼き捨てよわたしはわたしの棺ではない


手の甲の青い血管見せ合ってあなたとわたしがキメラであること


もし君が死ぬまで機械でいるのならわたしの指で壊してみたい


激情がブラックホールに消えていく もう一度だけ手を伸ばして


病棟で手を結び合う僕たちにスパンコールの雨降りそそぐ


一角獣 やさしい魔法が使えたらあなたの痣を薔薇にするのに


ガラスボタン朝陽にかざすまだわたしつかんだ未来を諦められない


生存の証明としてぼろぼろの手指をなぞる ずっと奥まで


傷ついたうさぎが心に住む君がいい子のふりをやめますように


君という迷路の中で永遠に朽ちない薔薇を探し続ける


街中のパラソルチョコはひらかれて生きてるうちにまた会いましょう

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