第4話 限界、一人目
王創は目を覚ました。今回はそこまで深くは眠っていない自信があった。ふと立ち上がりドアをスライドさせ外に出た。王創はひたすらにトイレを探していた。冷静に、かつ情熱的にトイレを探していた。「もーれーるー」限界に達していた。そしてついに見つけた、トイレはこちらと書いてある看板。「そこの角を曲がればすぐなんだな~。」王創は一段また一段と走るスピードを上げる。そして角を曲がろうとした瞬間、衝撃が走った。固い、いや堅い?まるで大木に当たったような感覚が、体を駆け回った。「いって~」フンという鼻息とともに手が差し伸べられる。「大丈夫か少年。」手を差し伸べてきたその人物は、筋骨隆々で、太い眉毛に、太い唇、ぱっと見は外国人だ。「ありがとう、ございました。」王創はぽろっと礼をこぼす。「いいってことよ、人と人は助け合いだ。」とても外見は怖く、硬いイメージを持たせるが、中身はとてもいい人なのだろう。それどころではない王創は忘れていた。波が限界に近いということを。「漏れちまう~。」バタンとドアを閉め、何とか間に合ったようだ。用を済ませトイレを出ると、すぐに王創は菅原を探しに行った。謝りたかったのだろう。馬鹿な王創なりに、自分が悪いことをしたという自覚があったのだろう。スタスタと足を進めて分かったことがある。このcenaという部屋はかなり大きいようだ。「おっ、居た居た。菅原さーん。」菅原を見つけた王創。すぐにそばに寄り、謝罪した。「さっきはごめんな。俺ひどいことを言ってしまって。」菅原は一つため息をついてから、続けた。「そのことについては、もういいんだ。それより紹介したい人がいるから、ついてきてくれ。」そう言われ、菅原の後ろをついていく王創。前回狭間の世界にと飛んだ部屋まで案内された。そこにいたのはもちろん、トイレの手前で衝突した、あの人だった。「やはりトイレの君だったか、あの時はすまなかったな。俺は武上謙信(たけがみ・けんしん)、よろしくな。」又しても手を差し伸べられた。王創はその手を握り、厚く握手を組み交わした。間もなく菅原が口を開く。「折角のところ悪いけど、次の救助者がいるみたいだ。これには二人で出てもらう。今度のZの反応はこれまでにないほど強い。気を付けてくれたまえ。」王創も、武上も、どんとこい、という表情だ。自身に満ち溢れている。注意勧告を行った菅原は、小走りで部屋を後にして、オペレーション室へ向かった。そして武上が問う。「王創君、君の武器はどのような形になったんだ?君が初めての同僚なんだ、自分以外の武器の変身を見たことがなくてな。」これに対して王創が返答した。「僕の武器は刀になりました。俺自身は刀と全く無関係な日常を送っていたので。」武上は少し考えてからこう言った。「もしかしたら、遺伝子的に刻まれているのかもしれないな。ちなみに俺の武器は秘密だ。戦闘をしてからのお楽しみということで頼む。」なんというかその顔でユーモアがあるタイプの人間も珍しいが、王創は勝手に武上にゴリ先輩というあだ名をつけたのだった。そして二度目のカウントダウンが流れる。ぷちゅんと転送の音が鳴った。
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パラレルワー有ルド 我成小鳥 @aganari____kotori
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