第3話 葬る形と正体

睡眠薬を飲まされぐうぐうと寝ている王創。それを研究室で調べている王創を名乗る少年私、「これは面白いでーただねぇ、くきき」不敵な笑みを前回に何かを企んでいる様子だ。

そして、王創が目を覚ます、むくりと体を起こし辺りを見回す。部屋のドアを開け私が入ってくる。「やあ、熟睡できたようだね。気分はどうだい?」聞かれるまでもない、かなりの時間王創は眠っていた。時間にすると十時間ほどだ。「俺の寝顔とか撮ってないだろうな~。」いらない心配をする王創、「あっ!」といきなり思い出したかのように急に早口になる王創。「あの女の子は無事かよ!」その質問は寝顔の前に聞いてほしかったところである。「ああ無事だよ。君のおかげで傷一つない。」その言葉にひとまず安堵の表情を見せる王創。それと同時に、他に助けを待つ人がいないかを心配している王創の表情をくみ取ったのか、私が言葉を付けたした。「ちなみに、特別武器の話をしただろう。その時に他にも武器を持つべき人がいるって言ったよね。その中の一人は君より早くこの世界に来て仕事をしているんだ。だから他の救助者はその人に任せているよ。」王創が思っているほど現状が切羽詰まった状況ではないことを王創は実感した。そして、そのもう一人の仲間というのが気になった王創であった。そして王創は武器に対して私に問う「教えてくれ、この武器のこと。なんで変形して刀になったんだ。」当然の質問であった。Zを倒した時とは精神状態が違う。シラフになればなるほど疑問は深まるばかりである。「その武器は専用って言ったよね。それ嘘なんだよね。いや、正しくは専用ではあるけど、王創君専用ではないっ言うのが正解かな。これの専用ってのは選ばれた六人専用って意味なんだ。」王創は頭の上に?を浮かべている。この男こういう時に呑み込みが悪い、なんというか不思議な男だ。「どうゆうことだ?」まだ話を飲み込めていない様子だ。まあ、それも無理はないだろう。なんたって彼は十一時間前は普通の高校生だったのだ。「次になぜ変形したのかについて述べよう。あの武器は、持ち主の脳内イメージによって変化する武器なんだ。だが変身できる形は最初に変身した形のみ。つまり、持ち主が最初に思いついた、相手を葬る形にしかなれない武器なんだ。最初にハサミだと思ったらハサミ、剣だと思えば剣になる。ただ武器の変身前の状態は勝手に変えることができる。だから君の武器の初期フォルムはバットにしたんだ。ずっと握ってきただろう。説明はこれでいいか?」王創は・・・ダメそうだ。これには私も頭を抱えて「あちゃー」とでも言いそうな表情を見せた。だがこれに関しては私にも非はあった。いきなり情報を流しすぎだ。まるで一度同じ説明をして、一発で話を理解した人間がいたかのような口調だった。「あの人なら一発で理解できるのだが。」愚痴をこぼす私。もう一人の協力者はそこまで優秀な人物なのだろうか。「そういえば、お前の自己紹介してもらってなかったよな。教えてくれよ名前とか趣味とか。」王創は私に問う。やれやれと言いたそうな顔で私は答えた。「私の名前は・・菅原恵(すがわら・めぐみ)十七歳だ。君より歳は一つ下になるな。」こんなにも偉そうなのに王創の一つ下だったとは、驚きである。「恵って、女みてぇな名前してんだな。」王創がぽろっと、思ったことを口にした。空気が凍る、この男地雷というものを知らないのだろうか。思ったことを軽々と口にする。数秒の空白の後菅原が口を開いた。「悪かったな、こんな見た目で。これでも一応は女なんだが。」まぁびっくり。王創は驚きのあまり口を開けたまま、ベットの掛布団を頭から被り、うずくまるような姿勢をとった。掛布団のなかで王創は一人葛藤していた。そうである、彼は高校の三年間を野球に捧げた高校球児なのだ。葛藤せずにはいられない。確かに菅原はスレンダーで、白衣に、眼鏡で、よく見ると女の子らしい部分もあった。がばぁっと、掛布団をぶっ飛ばして、王創は聞く。「本当に女かぁ?」ボゴン!グーパンチであった。よくよく考えれば普通であるこの男モラルというか、デリカシーが一部欠如している。「悪かったね、女らしくなくて!」菅原はドアをすごい勢いで締め、外へ出て行ってしまった。仕方ないだろう、これに関しては王創が悪かった。悪かったのだ。

そして、王創は思い出した。菅原が言っていた武器についての話を。「Zを葬る形か。俺は葬る物として刀を想像したんだな、刀を握ったことはないんだけどな~。」

仰向けになりながらぶつぶつと独り言を言う王創。そして王創はもう一度眠りについた。

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