第14話 二人で

 蛙型コークスの口に引き摺り込まれそうになったとき、ベイカーが青白く光った。



(さっき星燈は確かに使い果たした!なのに、なんで——)


 いや、理由はどうでもいい。今放てるなら、使うだけだ。



 オレは銃口を蛙型コークスに……ではなく、人型コークスに向けて、引き金を引いた。


 星燈は先ほどと比べてほんの少ししかなく、それは糸のように細い線を残して、人型コークスに一直線に伸びた。



 人型コークスがまるで何かに呼ばれたかのように振り返る。


 その様は背中に目が付いているかのようだった。オレには聞こえないコークス同士の信号があるのかもしれない。



 間一髪で避けられてしまった。コークスが呟く。



「変な術まだ使えたノですネ」



 そして、人型コークスはコークスの群れの中に隠れた。オレは瞬時に叫んだ。



「ミナ、走れ!工場へ!!」


 ミナが蛙型コークスの舌にぶら下がるオレをみながら叫び返す。



「ルクス!!来て!スターゲイザーに貴方もなれる!私となら!」


 オレ苦笑いを浮かべた。無茶を言うお姫様だこと。どうやってこの舌から逃れろというのか。


 それでも王がいうなら仕方ない。やってみよう。


 オレはとりあえず短剣サクスでコークスの舌を切り払おうとしてみた。


 しかし、想像通りコークスは固くて切れ目を入れることすらできなかった。普通の武器は通用しない。


 思考を切り替えて次の行動に移る。


 ベイカーをコークスの舌に向けて構える。

 一撃目を外した場合の追撃として、少しだけ星燈を残していた。


 しかし、その量は少なく、打ったとしても糸ほどの細さで、コークスの舌を分断出来はしない。


 だから、反対の手で握っていたオリヴァーの短剣サクスをその銃口に当てた。


 出来るかは分からない。でも、出来る気がする。失敗ならどの道死ぬだけだ。やってみよう。


 オレはトリガーを引いた。


 青い弾丸がサクスに当たりサクスが強く振動する。

 そして星燈の弾丸はサクスの吸収されてサクスの表面が星燈を纏った。


 同時に弾かれた勢いそのままにサクスを振り抜き、コークスの舌を切り裂いた。



(行けた!)


 オレはそのまま群がるコークスたちを斬り刻み、コークスの顔を足場にして星燈の中のミナへ向かう。あと、少し!手が星燈に届く直前、オレの足を何者かが掴んだ。


 直感的に悟った。

 人型コークスに違いない。



 そして、その一瞬が命取りとなり、オレはコークスに完全に取り囲まれてしまった。


 もうダメか。そう諦めた瞬間——




「手を!!」


 白くか細い腕がコークスの隙間から伸びてきた。神の手?いや、ミナの手だ。



「ルクス、スターゲイザーになって!」



 オレはその手を握り、一言呟いた。



「——〈星燈の顕現オン・アステル〉」



 そして、オレたちは青白い光に包まれたのだった——。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎日 20:45 予定は変更される可能性があります

Stargazer 《スターゲイザー》☆彡に成り損ねたオレは、崩壊世界をなんとか生き延び、出来損ないの君と出逢って世界を変える チン・コロッテ@少しの間潜ります @chinkoro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ