犬のくさめ 🐶

上月くるを

犬のくさめ 🐶



六月の明け初むまちのしじまかな

野あやめや走り根無尽に走らせて


老鶯や眼下のまちを一望す

郭公や国見ケ丘の古墳にて


夏蝶に古代の長の眠りかな

連山に残雪もありビルの街


早苗田の正しくならぶ平かな

水の田におのがすがたや夏燕


薫風に羽ばたくごとく風見鶏

深紅のギターケースや若葉風


うす曇り黄薔薇の芯の鬱金色うこんいろ

薔薇垣の咲き乱れたる美容院


雛罌粟を宙に浮かせて青嵐

満開のさつき滴る露天風呂


降り立てば右も左も麦の秋

卯の花やいまは動物診療所


住む人を未だ知らずや柿の花

架け替への橋の鉄組み月見草


麦打ちや犬のくさめの立てつづけ

いまさらに分かる事あり古茶新茶




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