第12話  朱雀、合格できるか?

「次」「次」「次!」


 オーディションは始まっていた。

 流れ作業のように候補者が演技していく。

 だが誰も監督のお気に召す演技をできるものはいない。


 ここに来てるのは若手俳優、新人も中にはいる。そう考えると演技力が低い者ばかりなのは当然の事。

 それは神邏もまた当てはまる……のだが、


 神邏の演技には、唯一監督の目が止まった。


「おい坊主、何で静かに変身ポーズした?」


 全員がやらされた演技はまず、変身ポーズだった。

 誰もが初変身のシーンと聞いた故に、迫力を見せたり、叫ぶように変身シーンを演じて見せた。


 だが神邏はなぜか静かに変身シーンを演じたのだ。

 主人公のキャラは別に冷静な性格ではない。それに初変身時は友人が危険な目にあい、主人公が怒りを表すシーンと書かれていた。

 だからこそみんな、激しく演じたのだ。


 神邏は言う。


「……一話と二話の台本、見たんですが……怒ってはいても、内心敵に恐れるような心理があったようなんで」

「――!」

「正統派主人公なら激しく怒りのままに変身するんでしょうが、この主人公は臆病な所もあるじゃないですか。……だから戦う意志こそあっても……激しく怒るのは……違うかなと」


 台本のセリフだけではわからない主人公の感情。それは台本全てを読み、深く物語を知っていなければ出来ない演技だった。

 素人なりに、それを神邏は感じたのだろう。


 それに、二話を読むのはこのオーディションでは関係ないこと。

 二話のシーンをオーディションでやるとは言っていなかったし、台本事態はここで渡された物だった。

 つまり神邏は演技の練習より台本を読むことを優先していたのだ。


 時間までに演技の練習してもたかがしれてるから? それとも単にストーリーが気になったから?

 疑問を感じた監督だったが、今はそんな事どうでもよかった。


「こぞう、名前は?」

「……美波神邏です」

「合格だ。お前が主役だ」

「……え?」


 想定外の発言。いや、そもそも合格としてもこの場で発表などするものなのかと、驚いた。



 ――つづく。



 神邏ファンのコーナー。


「神邏くんの演技~♡ これは永久保存物ですね~♡」


 オーディションに勝手に忍び込み、シャッター音がしないカメラなどで何度も録画するルミア。

 片瀬が止めるも聞かずに勝手な行動。


「合格だ」


 と、監督の一言を聞くと……


「やったあ! やりましたね神邏くん!」


 と、つい、声を出してしまうルミア。


「……ルミ? 入ってきたらダメなんじゃ……?」

「え? あ、」


「なんだこの小娘は! つまみ出せ!」


 監督の指示でガードマンが現れるも、


「神邏くん! また後で♡」


 ルミアはガードマン達を弾き飛ばして逃亡!

 

「な、なんだあの小娘! なんてパワーだ! ガードマン達が……」


 凄まじい身体能力であっさりとルミアは逃げおおせた。

 ……片瀬を残して。


「え、あ……」


 注目が片瀬に向かう。


「あ、その……ご、ごめんなさい~!」


 片瀬はあっさりと捕まってしまった。


 一方、ルミアは逃げた後、神邏の写真などを売ってくれといろんな方々に言われたが全無視したもよう。


「神邏くんのグッズは全部私のものなんで♡」



 コーナー終わり。



「次回 朱雀、出演後の影響」



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深緑のアイドル? メガゴールド @rankaz

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