正しい母親。
正しい家族。
正しい夫婦。
正しい愛情。
正しい、犠牲。
このおはなしに登場する人物たち……主人公たちは、みな何らかの事情を抱えています。誰もがそうであるように。わたしが、あなたが、そうであるように。
だから、優しくなれるはず、分かり合えるはず。
だって同じ人間なんだから。
だって悩みを抱える同士、なのだから。
そう、なりますよね。
だから、支え合えるはず。
夫に、友人に、親に、頼ればいい。
助けを求めればいい。
それができないなら、しないのなら、それは自己責任。
しないほうが、悪い。
そう、なりますよね。
遠いとおい、空。
秋でも冬でも見ることのできる、花吹雪。
天を覆う、すべてを包む、桃色の霞。
わたしも、あなたも、それを見ながら。
たがいの地獄を踏むのです。
正しい、犠牲。
たがいの能面を、見つめ合うのです。
正しい、諦念。
それ、でも。
それでも。
救いよ、あれかし。
ひとりでも多くの方の目に、この作品が留まりますように。
息子が小さい頃、駅のホームでおばちゃんに声を掛けられた。
よくある世間話しかしていないけど、ニコニコな息子を見ておばちゃんが
「いい子ね~。ニコニコしてるわねぇ。ママが幸せなら、ボクも幸せなのよねぇ」
みたいなことを言ったのだ。
私はその時、ワンオペでしんどくてとんでもなく精神的に不安定で、その言葉を聞いた瞬間、号泣しそうになった。
私、全然幸せじゃないです!
そう、叫びたかった。
母は子を宿した時からとんでもなく責任重大で、神経をすり減らしている。
産んでからの数年間は、子を生かすことばかり考えて生きていた。(私はね)
子育てを楽しむなんて余裕はなかったし、誰にも助けてなんて言える状態じゃなかった。
このお話を読んだら、泣いてしまう。
こういう場所が、あったらよかったのに。
私も誰かに、寄り添ってほしかったな。
今は少しずつ子育ても変わってきて、父親も積極的になっていると思う。
でも男女では思考も違うし、すれ違いが起きることもあるだろう。
親だけでなく、地域、社会全体がもっと「子供」に興味を持ったり、大切にしたりしなきゃダメなんじゃないか、って。
こういう場所がそこかしこにあったらいい。
道行く人が、みんな子供を微笑ましくみられる世界であったらいいのに。
長いわりに中身のないレビューになってしまったけど、男女年齢関係なく、このお話を多くの人に読んでいただきたい。
そして、ほんの少しでもいい、優しい気持ちになってもらえたらと思います。