第36話 荒野の中心で愛を叫ぶ

 バコタールが戦いの舞台を空に選んだのは2つの理由があった。

 1つは大地に住まう人々を巻き込まないため。そしてもう1つが敵が纏う吉凶結界の影響力を極力低下させる為だった。

 敵の纏う結界内では、存在するあらゆるものが敵を味方し、こちらには敵になる。そのため何も存在しない空を選んだのだが。


(くっ! 風がっ!)


 魔力を纏った風が不規則に吹き荒れ、それは勿論敵にとっては追い風となり、こちらにとっては障害となり立ちはだかる。

 一方的に攻撃を仕掛けているのはこちら、だが、一方的にダメージを受けているのもこちら。

 戦いとすら言えない、無様な一人芝居が繰り広げられていた。


「はぁ、いい加減諦めません?」

『はっ、はっ……くっ……あき、ら、める……ねぇ』

「ええそうですわ。貴方がいくら物わかりが悪くとも、この現状程度理解できるでしょう?」


 千年狐狸精は肩をすくめながら満身創痍のバコタールへと語り掛ける。

 バコタールは傷一つなく一滴の汗すらかいてない敵を見ながら自嘲の笑みを浮かべつつこう語る。


『諦める、か。ああ、そうさ、あたしは何時も諦めて来た』


 彼我の戦力差は絶望的、勝機など万に一つも見えてこない。


『兄様があたしを残して死を選んだ事も諦めた。

 海の向こうからやって来た人間たちが、あたしの子らを虐殺していくのも干渉すべきでないと諦めた。

 子らが死に、大地に境界がしかれ、自分の力がそがれていくのも、歴史の流れと諦めた。

 諦めて、諦めて、諦め続けて来たのが、このあたしだ』

「そうですか、それはご苦労様でした。では此度もそうすべきでは? いい加減わたくしも飽きましたし」

『はっ! そうはいかないねぇ。実はあたしもいい加減に諦め続けるのは飽き飽きしてたところなのさ。

 相手が人間じゃなくてめぇなら、何の遠慮も呵責もない。

 ちーとばかし、あたしの八つ当たりに付き合ってもらうぜッ!』


 バコタールはそう叫び、流星の如き勢いで千年狐狸精へ突撃をかける。

 それと同時に気流が大きく乱れ、バコタールはハリケーンに巻き込まれたように振り回された挙句、不運にもちょうど振り落ちて来た隕石が直撃した。



 ★



「さて、皆様大変お待たせ致しました、何やらご相談されていたようですが、結論はお出になりましたか?」


 バコタールの自滅を見送った千年狐狸精は、すらりと大地に降り立って、ジョンたちへと語り掛ける。


「あー。まだ出ないので、後3万年位上で待ってもらうってのは?」

「大恩あるジョン様の申し出とは言え、わたくしも多忙な身でして」

「んじゃ、後1億年!」

「お話がそれだけならば、とりあえず皆様を殺しますが結構ですわね?」

「いっ! いっいや! ちょまっ! ちょっとタンマ!」

「いえいえ、ジョン様の生き汚さはわたくしも良く見させていただきましたので、とりあえず貴方から先に念入りに殺しときますね」


 そう言って満面の笑みで自分の方へ向かってくる千年狐狸精に対し、ジョンは目にも留まらぬ速さで銃を引き抜いた。


「それで? わたくしにそんなおもちゃが効果あるとでも?」

「残念ながら『ノー』って事程度は知ってる」

「はぁ。それで?」

「そんな事は知ってるし、タマモの姿をしてるお前に殺されてやるのもちーとばかりムカつく」

「はぁ、結局何が仰りたいので?」

「要するに、テメェみてぇな駄肉ババアに殺されてたまるかって事だ」


 ジョンはそう言って、くるりと銃を回転させて自分の胸を撃ちぬいた。


「…………で? 何がしたかったのでしょうか彼は、気でもふれたのでしょうか?」


 千年狐狸精は肩をすくめてそう語る。

 グレートスピリッツと直接繋がった今、あの男はもうすでに用済みだ、分け身タマモが世話になっていた故に、丁寧に喰らってやろうと思っていたが、自死してしまったなら仕方がない。

 さて、物のついでにここらの人間を全て殺そうかとした時、千年狐狸精の顔が一気に青ざめた。


「が……ぐっ……こっ……これ……は」


 額から脂汗をたらし、胸を押さえてうずくまる千年狐狸精に語り掛けたのは、ついさっきまではいなかった、長身瘦躯の頼りなさげな男だった。



 ★



「……あんた、だれ?」


 突如現れたなよなよ男にジョンはそう問いかける。男は一度、眩しそうに空を見上げた後、情けない笑みを浮かべてこう言った。


『妹から聞いてるかもしれないが……僕はココマートって言うんだ』

「ココ……マート?」


 小首をかしげるジョンは、猛烈な勢いで駆けつけて来たハカンに突き飛ばされる。


「ココマート! 貴方が善なる神ココマート様でございますか‼」

『あーうん、一応そう言うことになってるかな』

「ーーーーーー‼」


 自らが崇める神話の創造神の片割れ、悪神バコタールの双子の兄、善神ココマートが降臨したことに、ハカンは言いようのない感情があふれ全身を震わせる。


「いきなり突っ込んでくんじゃねぇよ!」


 ジョンは体を震わせ立ち尽くすハカンに、全力のドロップキックを叩き込んだ後、ココマートに語り掛ける。


「あーあーそうだった、うん、確かにあの姉ちゃんから聞いたわ、今思い出した。

 それで? 何とかなるって何の事だ?」

『うん、まぁかなり危険な賭けにはなるだろうけどね』

「安心しろよココマート。その賭けとやらが失敗しようがしまいが、今ここで何もしなけりゃここに居る全員がお陀仏だ」


 そう言って肩をすくめて笑うジョンに、ココマートは頼りない笑みを浮かべてこう言った。



 ★



「こっ……これは……死の呪い……」


 千年狐狸精は自分の体が、急速に体内から死んでいくのを感じていた。

 例えようのないほどの痛みと、全てが消えていくほどの寒さに膝をつく千年狐狸精に、なよなよ男ココマートは頼りない笑みを浮かべてこう言った。


『聡い君の事だから、僕の事なんてとっくの昔に知っているかもしれないけど、一応初対面だから挨拶しておくね。

 僕の名はココマート、君がさっき遊んでくれたバコタールの不肖の兄って奴さ』


 ココマートは苦痛に顔を歪める千年狐狸精から返事がないことに困ったような顔をしつつも話を続ける。


『まぁなんだ、僕の伝承も知ってるよね。僕は僕たちの子に死を教えるために、自ら死を選んだんだ。

 つまりはまぁ、僕は生むものであり、死をもたらすものであってね。そこの彼を通して死の概念を君に届けたって事なんだ』

「きっ……きさま……生贄……を」

『まぁ、有り体に言えばそう言う事、彼は僕に心臓を捧げ、僕はそれを受け取り願いを叶え死を届けたた。

 君にとっては創造神なんて役割は、単なる記号に過ぎないと思ってたようだけど……』


 ココマートは、苦痛のあまり大地の上で身を丸める千年狐狸精を冷たい瞳で見下してこう言った。


『創造の神より生まれし死の概念呪い、世界を支え回すその重みを、苦痛として味わいながら死にゆくがよい侵略者よ』

「があああああああ⁉」


 このままでは、死の概念が全身に回り消滅する。

 千年狐狸精はやむを得なく、死の概念の発生源であるタマモとの繋がりをカットした。


「つっあっ」


 千年狐狸精より吐き出されたタマモは、素早く千年狐狸精より距離を取り、荒野に倒れたジョンへとチラリと視線を向け、あきれ果てた口調でこう言った。


「おい、もう芝居は良いぞ下僕1号」

「芝居じゃねぇよ! 実際に風穴開いてんだよ俺の胸には!」

「なっ⁉」


 まるで何ともなしに立ち上がったジョンを見て、千年狐狸精は目を白黒させる。

 タマモはニヤリと頬を歪め、そんな千年狐狸精を嘲笑った。


「かかか。貴様はこの男の事が全くわかっちゃおらん」

「なっ……なにが?」


 もしや、タマモとラインが深くつながっている事により、疑似的な不老不死にでもなっているのかと考えた千年狐狸精に、タマモは自信に満ちた笑みを浮かべる。


「阿呆か貴様、この反吐を吐くほどに小心かつ臆病かつ卑怯極まりないド変態が、たかが避けようのない死に直面したからと言って、自ら死を選ぶわけがあるまいて」

「ちょっと言いすぎじゃないですかねッ⁉」


 千年狐狸精は、ぎゃーぎゃー喚きたてるジョンと余裕の笑みを浮かべるタマモを混乱しながら眺め続ける。

 その視線に気が付いたジョンは、何ともなしにこう言った。


「あ? これ? 唯のブラフ、いや、撃ったのは撃ったけど、太い血管とか避けて撃ったから」

「ばか……な……」


 千年狐狸精とて、銃のメカニズム程度は理解している。それ故にジョンが言った事がにわかには信じられなかった。

 茫然自失としている千年狐狸精にココマートがほっと胸をなでおろしながらこう語る。


『いや、彼の銃弾に、死の概念が込められていたのはホントだよ。ちょうどそこらに妹が作った魔力の結晶ターコイズのかけらがあったからね、それを加工して特性の弾丸を作ったんだ。

 後はまぁ彼に選んでもらったんだが――』

「やかましいわ! 何が悲しゅうて自分で自分の心臓をぶち抜かないかんのじゃ!」

『という訳で、彼は安易に死ぬことよりも遥かに困難な事を選択したってわけさ』


 そんな風に騒ぎ立てる一同を前に、千年狐狸精は額に青筋を浮かべながら無理やりに笑みを作り獰猛な牙をむき出しにした。


「よくもまぁここまでひとをコケにしてくれましたね。

 ですが、勝負が振出しに戻っただけの事。

 たかがわたくしの3尾でしかないわたくしが、本体であるわたくしに勝てるとでも?」

「かっかっか。強がりはよすがよい。この臆病者が自分を撃った余りの恐怖に仮死状態になっておったのはれっきとした事実。

 わらわ中継地点と素通りして貴様へ運ばれた死の概念はしっかりと貴様をむしばんでおる」

「そこまで言うのなら試してみますか?」

「無論じゃ、貴様とのラインは完全に断たれておる、先ほどの様にはいかぬぞえ?」


 そうして、怪獣大決戦3回戦が幕を開けた。



 ★



「ちぃいッ‼」

「がぁああ‼」


 攻防は一進一退を極めた。

 瑞獣の力――タマモの吉凶結界は確かに働いていたが、一時的とは言えタマモを吸収した千年狐狸精もその力を獲得しており、元々の所有者であるタマモがやや有利と言った程度。

 死の概念で大幅に力を失っていても、地力においては3尾のタマモに対してその倍の6尾を持つ千年狐狸精が圧倒していた。


 故に勝負を分けるのは――


(気合と根性じゃッ!)


 術と術、技と技、爪牙と爪牙が激しくぶつかり合う。

 タマモの手刀が千年狐狸精の腹を貫くが、その硬直を狙われてその腕を切り落とされる。

 双方即座にそれを再生し、次は尾と尾が激しく打ち合う。


(やはり手数が足らんッ!)


 一進一退の攻防は徐々にタマモが押されていく。

 さらには時間はタマモに味方をしない、千年狐狸精がタマモとのラインを結びなおせば、タマモはまた即座に千年狐狸精に吸収されてしまうだろう。

 焦りはミスを呼び、ミスはダメージとなり積み重なる。


「ぐっ⁉」


 千年狐狸精の攻撃がタマモの左半身を大きく切り裂く。

 タマモが弱れば弱るほどに、ラインの再接続は容易くなる、千年狐狸精はニヤリと頬を歪めるが――


『あたしの獲物を横取りしてんじゃねぇよ! このクソ狐がッ!』


 ――その横っ面を復活したバコタールが全力で殴り飛ばした。


「くっ……貴様……」

『はっ、いい格好だなクソ狐』

「やかましい。貴様こそ死にかけではないか」

『はっ、そんなもん、当の昔からよ』

「かかっ」

『ははっ』

『「まぁ続きはアレをやってからじゃ(だ)」』


 2人はそう言って同時に千年狐狸精を睨みつける。

 怪獣大決戦3回戦・第2ラウンドが開始された。



 ★



「しゃあッ!」

『おらぁッ!』

「くっ⁉」


 2対1となった千年狐狸精は徐々に徐々に押されていき――


「舐める……なぁあああああ!」

『「がっ⁉」』


 爆発的な力が千年狐狸精より発生し、2人は吹き飛ばされる。

 それは千年狐狸精の切り札と言えるものだった、彼女は尾に蓄えられていた力を一瞬にして全て開放しタマモとバコタールの間で爆破させたのだ。

 6尾の内、2尾を使いつぶして行った爆発は2人だけでなく、周囲一帯数マイルを更地に――


「なん……だと……」


 ――していなかった、吹き飛ばされたのは2人だけで、その傍にあるナスカッツの町は勿論、町の周囲に倒れている町人たちにすら傷一つ付いていなかったのだ。


『まぁ一応僕も創造神だからね』


 頼りない笑みを浮かべるココマートへ千年狐狸精が驚きと憎悪のこもった視線を向けたその時だった。


「誰が1発だけっつったよ、この駄肉ババア


 こっそりと背後に回ったジョンが放った死の概念が込められた銃弾が、千年狐狸精を背中から撃ち抜いた。


「きさ……ま……にんげん……ごとき……が……」

「はっ、人間相手ならばともかく、駄肉のバケモンなんかを撃つのに遠慮なんて要らねぇぜ」


 ジョンはそう言いつつ、慣れた手捌きで銃をホルスターに収める。

 それと同時に千年狐狸精は消滅したのだった。



 ★



「なぁ、どうしたらいいこの後始末」


 荒野には、気絶した町民たちが浜辺に打ち上げられた魚の様に並んでいるし、町自体も暴れ牛の影響などでごちゃごちゃになってしまっている。

 集団幻覚、とするには少しばかり大きな被害に、ジョンはどうしたものかと眉根を寄せる。そんな彼の視線の端に映ったのは、コソコソとその場から逃げ出そうとしていた、見覚えのある中年男だった。


 ジョンはためらうことなく銃を引き抜くと、その男の足元ギリギリに銃弾を撃ち込んだ。


「ひっ⁉」

「まーまー。そんな慌てないでいいじゃないっすか、ねぇウィンチェスターさん?」


 満面の笑みを浮かべつつ己に銃を向けるジョンに、ウィンチェスターは両手を上げてひざまずいた。


「たっ! 助けてくれ! 私は操られていただけなんだ! なんでもだ! なんでもするからッ!」

「あっそっすか。んじゃこれの後始末、適当にお願いしますね」


 ジョンはへらへらとした笑みを浮かべつつ、慣れた手つきで銃を収める。

 その様子を小首をかしげながら見ていたタマモは、こっそりとジョンの耳に口を近づけた


「なんじゃ貴様。人に銃を向ける事が出来るようになったのか?」

「しー! だーってろ。さっきのが最後の一発だよ!」

「おまっ⁉ もはや死の概念が刻まれた特別弾を単なる威嚇に使ったというのか⁉」

「るっせぇよ! 俺の勝手だろうが! ってかお前はいつまで駄肉おとな状態なんだよ⁉ とっとと元の姿に戻りやがれ!」

「かっかっか。何を戯けた事を言うておる、わらわはこの姿ナイスバデーこそが本来の姿。

 あらゆるものを魅了する傾国の大妖たるわらわと言えばこの姿なの――」


 そう高笑いを響かせるタマモの姿が一瞬にして少女の姿へと変化した。


「?……??」


 小さくなった自分の手を見て眼をしばたかせるタマモへ、ココマートが申し訳なさそうにこう言った。


『あっ、ごめんね。戦いが終わったみたいだからライン切っちゃった』

「……はっ? はぁあああああ⁉ なっ何を言うておるのか貴様⁉ ってか貴様がやっておったのか貴様⁉」」

『あーうん。僕、一応このあたりの創造神やってたからね。僕の妹と縁が繋がった君の……あーうん、詳しい話はまた今度ね』

「いっいや⁉ また今度ではない! おい待て! 消えるな!」

『いやーそう言われても、僕、一応死んだ身だからね……現界してるのにも限界が』

「シャレか⁉ 今のはシャレのつもりか貴様⁉ ちょっと待て! いい笑顔で消えゆくな!」

『あーにーさーまーーーーーーーーーーーーー!』

「うごっ⁉」


 ココマートを何とか引き留めようとしていたタマモは、バコタールに弾き飛ばされる。

 そして宙を舞ったタマモをジョンがしっかりとキャッチし、鼻の下をびろっびろに伸ばしながら何度も頭をなでながらこう言った。


「やっぱこっちだよこっち。なっ、お前、中身性格が最悪なんだからさ、せめて外見がわだけは最高でいようぜッ!」

「戯けが貴様! いいからとっととわらわを解放……って消えとるではないかあ奴が⁉」

「は? 俺は一向に構わないが?」

「やかましいわこの不敬者! 鬼畜! ド外道! ド変態! いいからとっととわらわを放せ! わらわは元のわらわに戻るんじゃーーーー!」


 蒼天の荒野に少女の叫びが高らかに響き渡った。



 ★



 その後、千年狐狸精が死んだことで、町民たちにかけられていた洗脳は全て溶けた。

 何故か知らないが傷だらけで荒野に横たわっていた彼らを1人で必死なって介抱していたウィンチェスターに、町民たちは一層の信頼を寄せた。

 だが、怪我の治療で町へとどまっていたライアットに、マーガレットが偽札の原版の事を相談したため、それは直ぐに霧散することになった。


 そしてジョンとタマモの行方だが。


「ったく。せっかく故郷に戻ったってのによー」

「やかましいこの下僕1号。せっかく元のわらわに戻れたというのに、貴様のせいで台無しになったのじゃ。わらわを元のわらわに戻すのが貴様の使命と知れこのうすらバカ」

「んなこと言われてもなぁ?」

「いや、わが友よ。ココマート様とバコタール様は確かにこの大地の上に存在していることが分かったのだ。先ずはオレたちがかつて聖地として崇めていた場所へと向かってみよう」

「えー? 出たとしても、先ず出てくるのはあのおっかない妹さんが先だろー? 無理じゃね?」

「大丈夫だ友よ、バコタール様はお優しいお方だ、心より礼をつくせばきっとタマモ様の願いを聞き届けてくれるとも」

「いやいや、タマモとあのねぇちゃんの相性最悪だったじゃん?」

「ジョン殿、少々口を挟ませて貰うでござるが。貴殿は少々、神々への敬意が足らぬでござるよ。例え異教の神であれ、深い敬意と礼節を持つべきでござる」

「異教でも異境でも何でもいいけど、智ちゃんは何で一緒について来てるの? 何? 俺にホレちゃったの? 今夜一緒に寝る?」

「謹んで断らせていただくでござる。それと此方こちが貴殿らに付き添うのはそこな九尾狐を監視するためにござる。大本である千年狐狸精が滅びたとはいえ、そ奴が傾国の大妖であることには違いござらん」

「はーぁ。智ちゃんは真面目だねぇ。せっかく顔がいいんだから、もっと俺に心を開いてくれてもいいんだよ?」

「先生? ダメですよそんなに簡単に女の子を可愛いだ何だって言っちゃ」

「オーケー話し合おうヘレン、だから銃に手をかけるのをやめるんだ」

「はっ戯けが、貴様如き小物がハーレムなぞ作れるものか」

「やっかましい! 誰が何と言おうと! 俺は俺を大好きな美少女で囲まれた生活を送るんだ! 貧乳こそ至高! 少女は愛とロマンで出来ているんだっ!」


 バカの叫びが荒野にこだまする。

 こうして元傾国の大妖と、元保安官と、その仲間たちは荒野の彼方へ消えていったのだった。


 ナインテール・meet・ウエスト~ロリコン保安官は荒野の中心で愛を叫ぶ~ 完

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ナインテール・meet・ウエスト~ロリコン保安官は荒野の中心で愛を叫ぶ~ まさひろ @masahiro2017

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