第6話 決着




ロレーヌ達との決着をつけるべく、俺は剣を彼らに向けると戦闘の構えをとった。



「貴・様・は!どれほど邪魔をすれば、気が済むのだーーー!」



と、ロレーヌはいきなり怒り狂ったように、そう叫んだ。

ようやく、レイラを殺し、願いを遂に叶えようとしていたところを邪魔されたのだ。ロレーヌの怒りは、今最高潮に達しているところだろう。



「スネーク!もう容赦はいらん!あいつを今すぐに吾輩の目の前で殺せ!」


「了解した……」



そう、スネークに命令すると彼はゆっくりとこちらに近づいてきた。



「どういう裏技を使い、私の毒を治したのかは知らんが……」


「今度こそ、私自らの手でお前を殺せるのだ!せいぜい楽しませてくれよ?」



先ほど、受けたはずの毒は影が〘血を燃やせばよかろう〙といい、全身が焼ける感覚を覚えながら、体内の毒を消してくれた。次あったら、文句の一つでも言ったやろうと考えていた。


スネークは、あたかも殺しを楽しむかのように俺を獲物のように見つめてきた



「快楽殺人鬼に殺されてたまるかよ。お前がさっきと同じように行くと思うなよ?」



俺は、そう言うと、影から送られてきた記憶をもとに戦闘の構えをとった。



魔力量が多い俺は、今までそれを使うことなく生きてきた。いわば、ただの魔力タンクだったわけだ。魔力の使い道は色々ある。

そして、これがその内の基礎の中の基礎。



「――なんだ、それは?!……その禍々しい魔力は!」



体の中の魔力自体を体に纏わせる技術、魔纏まてん

魔力を纏わせることで、身体能力をさらに向上させる。



どうやら、俺の魔力量が多いのは影が原因らしく、長年その魔力を体になじませ続けていた俺は、8年前に比べ、また魔力量が増えたらしい。



現に、ロレーヌやスネークは俺のその魔力量を見て、大層驚いている。

本当に影が何者なのか、疑問は募っていく。



「おもしろい」と呟いたスネークは、俺に急接近し、そのククリナイフを俺の首めがけて切りつけようとした来た。魔纏により、身体能力が格段に上がった俺は、まるで彼の動きがスローモーションになったかのように見えて、いとも簡単に弾いて見せた。



「ッ!……なるほど、確かにさっきまでとはまるで別人のように違うようだ」


「ならば、これはどうだ?」


「『呪われし九つの毒の爪牙ナインカースドポイズンファング』……いけ!」



さっきは、九つの蛇の頭、すべてをいなすことが出来ず、毒の状態異常を受け死にかけてしまった。が、今回はそうはいかない。目の前に迫ってくる九つの頭を前に、俺は剣を鞘に戻すと、極東から伝わったといわれる、居合の構えをとった。



「……?流石に私の魔法には対抗できなと諦めたのか。面白味には欠けるが、貴様はここで死ね!」



剣も構えずにいることに、俺が諦めたのだと考えたスネークは俺に向かってそう叫んだ。



俺には、そんな言葉は届かず、ただ”その時”までひたすらに集中し待ち続けていた。

蛇の頭の一つが俺の髪の先に当たったその瞬間、俺は鞘から抜剣した。



「『白水一閃はくすいいっせん』」



俺は、抜剣すると一瞬のうちにまるで川ようなに流れる動きで、九つの首を落とした。普通なら、カタナと呼ばれる武器を用いて行う技のため、本来の動きよりも剣を抜くまでに時間がかかりすぎてしまった。



俺は、スネークの魔法に難なく対応して見せた。



「クソ!……ならば、私の奥義をもってお前を葬ってやる!」



俺が、涼しい顔で魔法をいなし切ったことに腹を立てたのか、先ほどまでの冷静さを欠けるようにそう言ってきた。



「ちょうど、よかった。俺もあまり時間がないからな、次で決める!」



影から言われた通り、あいつの記憶を無理やり再現している俺は、もう1分もすれば反動で動けなくなってしまう。だから、お互いに次の技で決着をつけようとしていた。



「『すべてを貪る腐敗の王デバウド・スポイリーキング』」


「この技を受けて、生き残った者は今までに一人たりともいたことはない……」


「その減らず口も今すぐ聞けなくしてやる!」



スネークが、魔法を唱えると巨大な毒々しいナメクジが現れた。

一見、先程の蛇よりも弱そうに見えるが、周りにある植物がナメクジに触れると一瞬にして黒ずみと化していた。



ほんの少し指先が触れただけでも俺の負けだろう。だからこそ、あのナメクジを真っ向から消し飛ばすほどの、火力を持つ魔法を俺は影の記憶から見つけ出した。



「『そは深淵の底より生まれし我が怒り、慈悲無き懺悔を捧げ、恒久の時を眠れ。

   ――罰を下せし冥府の業火パニッシュメント・ヘルファイヤ』」



俺は、詠唱と共に目の前に魔法陣を展開すると、そこから青白い炎を放つと目の前のナメクジを地形ごと抉るように消し飛ばした。俺は、予想以上の威力に一瞬困惑したが、すぐさまスネークとの距離を詰めると、俺の攻撃をガードしようとしたククリナイフごと、彼を切り倒した。



「クソ、クソ、クソ!……せっかく、凄腕の殺し屋と聞いて大金を払ってやったというのに!」


「……この!役立たずが!」



一人残ったロレーヌは荒れ狂ったように自分の頭を掻きむしりながら、倒れ伏しているスネークに追い打ちをかけるように、彼の傷に向かって何度も蹴りを入れていた。



「ッ!……吾輩に、近づいてくるでない!」



俺が近づいてくるのに気づいた彼は、まるで立場が入れ替わったかのように俺に怯えるように叫ぶ彼を無視し歩き出そうとしたが……



「……ま、ず」



3分の限界を迎えた俺は、あとほんの少しで決着がつけれるはずの力なくその場に倒れてしまった。一時的とはいえ、今の自分には到底扱えるレベルではない力を行使した反動により、俺は眼の前が暗転した。








――side レイラ



先ほどまで私の目の前では、壮絶な戦いが繰り広げられていた。

ジークが魔力量が多いのは、彼を初めてみた時から知っていたが、まさかあれほどまでの威力を出せる魔法を持っていたなんて、私は驚いた。その魔法は、あの父にすら届きうるかもしれないと感じたからだ。



男とジークとの戦いは、彼のその魔法で決着は決まり彼が勝利を収めた。

ジークは、最後の敵である金髪の男ののもとへ向かおうとした瞬間、いきなり倒れてしまった。



「ジーク!……しっかりして!」



すぐさま、ジークに駆け寄り彼の安否を確認するとただ眠っているだけだったため、私はそっと胸をなでおろした。



「ふ、ふん。びっくりさせよって。……しかし、好都合だ!ソイツも、もう起き上がれまい!」


「結局は、吾輩が勝ちこの世界を支配するのだ!」



そんな、私たちの様子を見ていた男は、自分の方が優勢になり、勝利を確信したかのように笑っていた。


残された私は、彼はもちろん自分の身を守る手段を今持ち合わせていなかった。



「貴様を殺したら、そいつもすぐあの世に送ってやるから安心するのだな!」



万事休すとなった、私は願うしかなかった。

(お願い!誰でもいいから、私たちを助けて!)



「は!祈った所で、ここには誰も助けにはこれん。なんせ、屋敷の周りには五百人という護衛を……」


「――そこまでだ!」



金髪の男がそう言いかけていた言葉は、女性の甲高い声によって遮られた。



「な、なんだ?」


「ニコルド・ロレーヌ!貴様には、許可されていいな違法な交易と無数の殺人の容疑が掛かけられている。大人しく我々、王国騎士団についてきてもらおうか?」


「貴様ら、屋敷周りの護衛の奴らはどうした!たった、数人で片付けられる数ではなかったはずだ」


「貴様が、何を言っているのかは知らんが、私たちが来た時にはすでに半数ほど倒れていたが?」


「⁉……なぜ、どうしてなのだ?」



突如として現れた、王国騎士団に金髪の男は連れていかれそうになっていた。



「クソ!こんな所で、捕まってたまるものか!」



金髪の男はそう言うと、屋敷の方に走って逃げって言った。



「お前たち、どんな手を使っても構わん。奴を必ず捕えてくるのだ!」



女性は、部下の人たちにそう告げるとこちらに近づいてきた。

一瞬、身構えるようにジークを私の方に寄せ、女性を睨むように見つめた。



「そんなに警戒する必要はない。私は、君たちには危害は加えないし、なんなら被害者である君たちを保護するよう命令を受けているんだ。」


「それに。……そこで寝ている彼は私の知り合いでもあるしね」



そう笑いかけてきた女性が安全だと分かると、ようやく安心することができたのか、ジークを抱きしめるようにして私は眠りに落ちた。


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悪徳貴族に買われた俺は、世界の命運をかけて迷子を魔王城まで届ける事になりました⁈ 一二三 一八 @yoru_46w

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