マリー・フローレンス

シャルロットと話せるのは、決まって私が悲しい時だった。

学校で居場所がなくて泣いていた日に、うっかり迷い込んだ物置の中から見つけた綺麗な鏡。

私の好きなお花の装飾で、少し埃をかぶっていたけど目を奪われる鏡だった。

「あら?鏡の中にだれかいるの?」

それがシャルロットとの出会いだった。

お互いに小さかったから、鏡に映る女の子のことを不思議に思わないで何時間もお話をした。

「あなたの髪はとってもきれいね!私も金色の髪がよかったわ」

「ありがとう!でも私はあなたの髪もきれいだとおもうわ。黒い髪であなたの白い肌がとっても美しくみえるもの」

黒い髪を褒めてくれたのは初めてだった。

お母様もお父様も褒めてくれなかったから。

初めてシャルロットにあった日から5年が経って、進学した先で私は髪の色への劣等感が無くならず、他の人に話しかける勇気が出なかった。

その臆病のせいで、学校では魔女と呼ばれて悪い人達に目をつけられてしまった。

魔女の髪だと言われ髪を切られて、悔しくて泣いて帰ってきた。

帰ってきてからは最初に鏡のある物置の部屋に入って、シャルロットを呼んだ。

「マリー、どうして泣いているの?その髪は……」

「ごめんなさいシャルロット。あなたに褒めてもらった髪の毛を切られてしまったの」

お母様とお父様に相談するよりも、唯一私の髪を褒めてくれたシャルロットに謝りにいきたかった。

学校であったことを話すと、シャルロットは大きな瞳に涙をいっぱいためて私と同じくらいに泣いてくれた。

「私が鏡の中に行けたなら、マリーの髪をくしでといてなでてあげたいわ。私には私がマリーの髪をどれくらい好きか話すことしかできない……」

そういったシャルロットは、さっきよりもいっそう悲しそうに泣いていた。

私には自分のことをこんなに思ってくれる人がいて、髪を切られた悲しさも忘れて嬉しくなった。

「ありがとう、あなたにそう言って貰えて元気になれたわ。シャルロット、あなたは私の生きる希望よ」

そう言ったらシャルロットは泣くのをやめて、私の方をじっと見つめた。

「すごいわ、マリー!あなたの言葉でさっきまでの悲しい気持ちがなくなったわ。さすが魔法使いね」

「魔法使い?」

「だって私の悲しい気持ちをなくしてくれたんだもの。とっても優しい魔法使いだわ!」

月日は流れ、私はシャルロットに会いにいくことすらできないほどに足が弱ってしまった。

ソファに座りあの子が花壇の黄色いバラの世話をしているのを眺めて一日が終わる。

その日は孫のルナが花束を持って私に会いに来てくれた。

「ねぇ、マリーお祖母様、1かいの部屋にあるキレイなかがみの中に女の子がいたの。私お友達になったの」

とても驚いた。

シャルロットはいつしか話せなくなっていたから、辛い環境にいた私がいつの間にかみていた夢だと思っていた。

それが今、ルナとも話をしているという。

「本当にあの鏡の中に女の子がいたのかい?」

「そうなの。くるくるした金色のかみのけでかわいかったわ」

クルクルした金色の髪の毛の女の子、絶対にわすれることのない友達。

「そうなのね、きっと良いお友達になれるから大切になさい」

私はルナの黒く長い髪を櫛でといて撫でた。

ルナの髪がシャルロットに綺麗だと言ってもらえるように願いをこめて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

不思議な鏡 @kain--

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る