ルナ・マリー・フローレンス
私の家にはちょっと変わった鏡がある。
覗いた先にはいつも同じ子がうつる。
いつ覗いても同じ、服や髪型、身長なんかが変わらない不思議な子。
そして何故だか初めて会った日にも昔からの友達のように話しかけてきた。
ピンクと白のワンピースにクルクルした金色の髪の毛。
彼女が笑う事に髪の毛と服が一緒に揺れて、とっても可愛かった。
10歳くらいの身長で、何年経っても変わらない。
初めて会ったのは私が5歳の時、お祖母様の誕生日だった。
私はいつも3階で暮らしていて、ほかの階には入ったことがなかったから、お祖母様が寝ている1階の部屋に行こうとして迷ってしまった。
黄色いバラの花束を持って迷い込んだ部屋に、その鏡はあった。
部屋の中には椅子が一脚と、花束と同じ色のバラの装飾がされた鏡が壁に掛かっていた。
その鏡は綺麗に掃除されていて、くもってもいなかったのに私の姿は映らなかった。
不思議に思って近づいてみると中から声が聞こえてきた。
「こんにちは、かわいい花を持っているのね」
それが初めて彼女にあった日だった。
楽しくお話をした後、お父様に呼ばれてお祖母様の部屋へ行って花束を渡した。
その時に鏡のことも聞いてみた。
お祖母様はいつも私の話を聞く時は目を閉じて笑顔で頷くだけだったけど、その時だけは目を見開いて質問をしてきた。
「本当にあの鏡の中に女の子がいたのかい?」
「そうなの。金色のかみのけでかわいかったわ」
「そうなのね、きっと良いお友達になれるから大切になさい」
そう言ったお祖母様はいつもよりいっそう笑顔で私の髪を櫛でといて撫でてくれた。
鏡の中の彼女は、お祖母様が言った通り大切な友達になった。
勉強が辛くて楽しいことが何も無かった時、私が誰かと話をしたくて仕方がなかった時にお父様の目を盗んで鏡を覗くと彼女は現れる。
いつも話せる訳じゃなかったけど、その部屋はお祖母様と同じくらい私の心を癒す場所になっていた。
そして25歳になった時、心を癒す場所を1つ亡くした私は鏡の部屋に逃げ込んだ。
10年ぶりに話した彼女は変わってしまった私にも、昔と同じように接してくれた。
そして、私を励ますために彼女は言った。
「マリー、あなたは私の生きる希望だわ」
私のお祖母様の口癖。
学校で一人だけ黒い髪なのを気にしていた私に、同じ黒い髪を持つお祖母様がずっと言ってくれていた言葉。
その言葉のおかげで前向きになれて、学校の人たちとも話すことができるようになった。
お祖母様は自分を魔法使いだと言い、この言葉を魔法だと話していた。
大切な友達に使った思い出のある魔法だと。
その友達が今私の目の前に、お祖母様の友達だった姿のままいて、魔法の言葉をかけてくれた。
なんだか彼女とお祖母様に背中を押されているような気分になった。
「もう行ってしまうの?」
彼女の悲しそうな声に少し寂しくなったけど、私はしないといけない事を思い出したの。
「がんばってね」
私は魔法使いの孫、私にだって魔法は使えるはず。
だから、私のように逃げ場がない人達の心を癒す場所になって魔法の言葉をかけてあげるの。
誰かの生きる希望になる為に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます