終わり
終わり
『数日前に流出した警察庁長官のチップから、警察庁長官含む官僚が人身売買組織と繋がっていたことが発覚しました。この報告をうけ、大臣が会見を行い――』
静かな駐在所の中でラジオが流れている。零と別れてから数年が経った。ルーカスは、山の中にある小さな村で警察として働いていた。のんびりとした村人達の住む平和なこの村は、ルーカスの故郷に似ていた。
「警察さん!茂みで遊んでたら、つるが足に絡まってとれなくなったの。ナイフで切ってくれない?」
駐在所を出ると、数人の子供たちがルーカスに近づいてきた。
「わかった。動かないで」
ルーカスは、ナイフを取りだしてつるを切り始めた。つるは太く、なかなか切れない。
「警察さんのナイフ、切れ味悪いの?うちの家にある砥石あげるよ!」
「ありがとう。昔持っていた切れ味のいいナイフは、数年前に無くしてしまってね」
「警察さん、頑張って!」
「警察さん、あのねあのね!さっき警察さんと同じ服の人がね!」
子供たちがたくさん寄ってきた。一人一人が違う話をするので聞き取りにくい。相槌を打ちながら、つるを切っていると背後から気配がした。
「僕のナイフ、貸してあげるよ」
振り返ると、警察帽を目深にかぶった警察が、ナイフを差し出していた。受け取ったナイフは、よく手に馴染んだ。つるが切れた。
「わーい!ありがとう!警察さん!」
「かけっこ再開だー!」
子供たちは楽しそうな声を上げながら、走り去っていった。
ルーカスは、ナイフを貸してくれた警察と向き合った。ルーカスと同じくらいの身長で、開いた胸元からみえる肌は青白い。
「君は?」
「僕、最近やっと警察になれた新人なんだ。だから、わかんないことばっかりで……優しくしてね?おにーさん」
その警察は、前よりも少しだけ低くなった声で、甘えるように言った。
「……あぁ、歓迎するよ。昼食でも食べながら色々話そう。ハンバーガーでいいな?」
ルーカスは、借りたナイフを自分のナイフホルダーにしまった。警察は、ルーカスの行動を見て笑みを浮かべてから、警察帽を取った。淀みのない赤い目が光った。
「おう、いいぜ。ハンバーガーは俺の大好物だからな。よくわかってんじゃん。相棒」
「もちろん、約束したからな。相棒」
警察官と殺人犯 @kain--
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