第17話 疑似転生(憑依)の例が多い理由

 Ⅰ輪廻転生、Ⅱ例外としての転生、Ⅲ自力転生、

ときて、Ⅳが疑似転生(憑依)となります。

 これは、すでに出生済みの他者の魂を吹き飛ばすか、あるいは他者の魂が肉体を離れる瞬間を狙いすまして、その肉体に代わりに入り込む、というものです。


 第4話で紹介したように、

『異世界薬局』『凶乱令嬢』がその例です。

 そして残念というべきか、『無職転生』もまた、主人公ルーデウスの転生が、グレイラット家の長男が本来は死産だった隙を狙って、転移術によって現世界から送り込まれたらしい、ということが、かなり後になって明らかになってくるのです。


 ここで、第4話での問題提起に戻らねばなりません。

 もう忘れたと思うので、くりかえします。


 どうして、最初から(「異世界薬局」では)宮廷薬師の子息ファルマとして、あるいは(「凶乱令嬢」では)貴族令嬢として誕生する、という設定にしないのでしょうか。

 そしてむろん、「無職転生」なら、死産などという余計な設定を持ち出さずに、異世界のグレイラット家の長男であるル―デウスとして転生した、とシンプルに言えないのでしょうか‥‥という疑問です。


 その理由は、これらの作品の作者さんたちが、輪廻転生の死生観を信じていない、ということに求められると思います。

 輪廻転生が信ずべきならば、私は、過去世の記憶がなくとも自分が誰かの転生だと信じることができるのです。

 第10話「前世が日本兵だったと主張するミャンマーの少女」のところで、輪廻転生観が根付いている東南アジアでは、性別違和の徴候は(本人に前世の記憶があるなしにかかわらず)、前世で反対の性別だったことによって説明されていたように。


 では、どうしたら過去世記憶なしに輪廻転生の死生観を、信頼するに足るものにしていけるのでしょうか。

 次からは、いよいよ少しややこしい、理屈っぽい話に入っていきます。

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異世界転生する不適切な方法 アグリッパ・ゆう @fantastiquelabo

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