第16話 『転スラ』は創造主の失墜と再生の神話である
Ⅲ 自力転生
前の話の続きになりますが、『転スラ』について、私は次のように考えています。
これは、創造主の失墜と再生の神話ではないかと。
世界を創造した竜神ヴェルダナーヴァが人間の女性と交わった。するとその力のほとんどを生まれてくる子どもに奪われて、自分は人間の男性となって、人間としての寿命をまっとうして死んだ。ちなみにこの子どもこそ後に魔王ミリムとなる。
だから、失敗を反省し、やり直すために、異世界(つまりこの世界)に普通の人間の男性として転生し、37歳までゼネコンの社員三上悟をやり、事故で死んで、元の世界にスライムとして戻ってきた。
なぜスライムかというと、最弱の魔物からやりなおし、あまたの試練をへて元の地位まで復帰しなければならないから。
もう一つ、スライムは性別がないから。
創造主ヴェルダナーヴァだけでなく、その妹弟にあたる三体の竜種も、みな、異性で失敗している。氷結竜ヴェルザードは悪魔出身の最強魔王ギィに、灼熱竜ヴェルグリンドはミリムを生んだ女性の兄にあたる勇者ルドラに惚れた。そして暴風竜ヴェルドラは勇者クロエに「見惚れ負け」して封印されてしまった。
このスライム、リムルは、自分より強者でも取り込む。最初にヴェルドラを取り込み、次に異世界人で同郷の女性シズさんを取り込む。そしてこのシズさんのルックスをわがものにする。つまり、シズさんの顔をした美少女(ただし体は無性のままの)に擬態できるようになる。
ヴェルドラを取り込んで得た力と、シズさんを取り込んで得た魅力、そしてもちろん、サラリーマン男性としての仕事の経験を活かし、魔物の国の主へとのし上がり、やがて最強魔王へと進化する‥‥。
もちろん、Web版は読んでないので、単行本版15巻目で、ヴェルグリンドが闘いの最中にふっとそんな気がしてきた、というところで、私もそんな気がしてきた、という段階なのですが。
すなわちこれは、自力転生とでもいうべきものではないかと思うのです。
自力転生の一種として、魔術による転生ならば、『転スラ』にも、帝国の魔術師ガラダが得意とする輪廻転生術というのが出てきます。
『失格紋の最強賢者』では、主人公は未来への転生魔術で生まれます。
『無職転生』でも、初代竜神が、出生前のわが子を遥かな未来に転生させて、それがルーデウスがやがて出会うことになる最強龍神オストワルドになったのだし‥‥。
他にも作品例があるかもしれません。
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