あとがき
以下、最後に完全に蛇足でしかないが、自作解説のようなあとがきを書き残しておく。
本作のタイトルは、紛れもなく綾辻行人氏の『十角館の殺人』のパロディである。そもそも最初に思いついたのがこのタイトルだった。「十角館を誇張しすぎたら百角館になるなぁ」というハリウッドザコシショウのような思考で『百角館の殺人』のタイトルを思いついただけでしかない。
なんとなく面白そうなネタになりそうな気がしたので、百角館の具体的な構造を考えているうちに本作のメイントリックを思いついた。本家「館シリーズ」とは全く関係のないアイデアを思いつくことができたので、勢いで書き始めた次第。内容は、ハウダニットという点で、むしろ『斜め屋敷の犯罪』や『眼球堂の殺人』に近い。
内容は『十角館の殺人』と一ミリも関係がないため、もし二次創作的なものを期待していた人がいるなら、ごめんなさい。ただ、『十角館の殺人』を読んだことがある人の方が騙されやすいトリックにはなっている。なぜなら、主人公がホテルの構造を『十角館の殺人』のようなものだと誤解してしまうことこそが肝心の点だからである。
普通に考えれば、それはほとんどあり得ないような誤解なのだが、『十角館の殺人』を読んだことのある人間が、『十角館の殺人』オマージュのタイトルが付いた小説を読むときには、十分に同じ誤解をし得るのではないかと考えた。その試みが上手くいったかどうかの判断は読者に委ねる。
伏線はたくさん張っておいたつもりだが、ホテルの名称を始めとして、フェアかアンフェアかが微妙な点もある。でも、そのくらいは攻めないと「本格ミステリー」ではないと思う。フェアとアンフェアのぎりぎりをどれだけ攻められるかが本格ミステリー書きの楽しみだと思うから。
第八章まではメイントリックに向かって明確に書けたが、第九章と第十章はほとんど無理やり書いてしまった。メイントリックさえ明かすことができれば、犯人はどうでも良かったというのが本音。この適当な結末が受け入れられるかどうかはわからない。メイントリックの面白さを見て評価してほしいと作者としては思うが、どう読むかは読者の勝手なので何とも言えない。
第三章の岩合光昭のくだりは思いついてしまったからには書かないわけにはいかなかった。一応、主人公は勘違いをしやすい人物であるということを示して、後のメイントリックへの伏線としても働かせているつもりではある。上手くいっているだろうか。
文章力が未熟なのは大いに自覚しているので、その点は今後色々と習作を書いていくことで向上させていきたいと思っている。だが、こういう形の「本格ミステリー」こそが私の求めているものである、というのは一応示せたと思う。特殊設定でもビデオゲーム的な設定でもなく、現実的な範囲で展開し、それでもしっかり驚ける本格ミステリーが読みたいのだ。そういう本格ミステリーはまだまだ書けると思うし、私もできる限り実作をもって示してみたい。
長いあとがきになりました。最後に、読んでいただいた証に星やレビューなどを残していただけると作者にとって大変励みになります。よろしくお願いします。
百角館の殺人 小野ニシン @simon2000
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