第6話


 今日も私は、当たり前のようにかりんとうの橋の世界に降り立って、あなたとの幸せな時間を思い出す。

 もう一度、あなたに会いたいと願う。

 わたがしが、泳いで消えた。マカロンが眩しい。

 きらめくこんぺいとう。大きなチョコレートが跳ねる。

 風が吹いて、ココナッツが舞った。

 マシュマロから、何かが跳んだ。きっと、ナッツだ。

 ナッツとグミが、にらみ合う。

 へぇ。あの対決、どっちが勝つのか、ちょっと興味があるかも。

 かりんとうの橋の上にいると、時間なんて忘れて、いつまでも世界を見ていられる。

 楽しい。けれど、物足りない。

 どうしたら、また、あなたに会えるのだろう。

 水色の粒が、流れていった。

 ホワイトチョコが、遡上する。

 バリボリと、おせんべいを齧る音。

 ああ、と吐息が漏れる。

 何度眠りに落ちて、夢を見て、夢から醒めてを繰り返しても、この手ですくい抱きしめることができなかった今を、ようやく噛みしめられる気がした。

 振り向かない。

 音がする方を見ない。

 もしも、夢が夢であったなら、苦しくなってしまうから。


「よぉ」

 その声を聞いた時、とろんと垂れたわたしの目尻から、雫が落ちた。




〈了〉



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かりんとうの橋の上で 湖ノ上茶屋(コノウエサヤ) @konoue_saya

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